りゅうずの機構
りゅうずの役割
一般的に、機械式腕時計の「りゅうず」は、次の3つの役割を持っています。
ぜんまいの巻き上げ | ぜんまいが解ける力を利用して駆動する機械式時計では、ぜんまいを巻き上げます。 | |
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時刻合わせ | 時計の各針をダイレクトに動かして、現在時刻を表示するように時計を合わせます。 | |
カレンダー合わせ | 時刻合わせと同様に、曜表示や日表示を合わせます。 |
それにしても、りゅうずを回すだけで、上のような複数の操作が可能なのは、なぜなのでしょうか?
りゅうずの位置
りゅうずに与えられた複数の機能は、りゅうずを引き出したり押し込んだりして「りゅうずの位置」を変えることで可能になります。
一般的な機械式腕時計では、りゅうずの位置は3つあります。
最も押し込まれた位置 (普通の位置) |
ぜんまいを巻くことができます。 電池式腕時計(クオーツ式腕時計)では、空回するだけで機能しません。 |
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最も引き出された位置 | 時刻を合わせます。 ほとんどのクオーツ式腕時計でも時刻合わせになります。 |
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それらの中間の位置 | カレンダーを合わせます。 りゅうずの回転方向によって、曜表示合わせ/日表示合わせが切り替わります。 ほとんどのクオーツ式腕時計でもカレンダー合わせになります(時計にカレンダー機能がない場合は、中間の位置は存在しません)。 |
りゅうずのしくみ
りゅうずには、わずかな位置変更だけで、その機能を大きく変化させるしくみが備わっています。
下の模式図は、一般的な機械式腕時計のりゅうずから先の部品の一部を時計の外に持ち出してきたものです。
りゅうずの位置が変化することで、りゅうずの回転を伝える相手が変化し、複数の異なった機能を実現しているのです。
部品の動きは強調されています。
実際の動きとは異なります。
電池式時計(クオーツ式時計)のりゅうずは?
腕時計の動力源が、ぜんまい式から電池式に移行しても、りゅうずは優れたインターフェイスの一部として残りました。
腕時計は、その大きさから考えてみても、プッシュボタンの配置数には限度がある上、プッシュボタンは多くても少なくても操作手数を減らすことはできません。
しかし、機械式時計のりゅうずのように、位置による機能分化を上手に取り込むことで、より多機能な時計操作も可能になり、その上、操作感が大きく損なわれることもありません。
電池式時計(クオーツ式時計)のりゅうずのしくみ
一般的な電池式時計は、内蔵コンピューターに電気信号を送ることによって、時計内部の動作を制御します。
りゅうずを採用した電池式時計では、りゅうずの位置を変えることで、内部のスイッチの位置を変更し、りゅうずを回転させることによって、スイッチが端子に触れて電流が流れます。
機能的りゅうずが誕生して170年余り、アナログ時代の機械的機構の粋を集めたりゅうずが、デジタル全盛の現代においてなお、優れたインターフェースのひとつであり続けているのです。