Next Level Quality
メカニカルモデル
Caliber 0200/0210開発
シチズン時計株式会社(東京都)
部品から完成時計までを自社でつくることができる、「マニュファクチュール」であるシチズン時計。創業以来、長く受け継いできた哲学と技術を結集して、新型機械式ムーブメントの開発に挑み、メカニカルモデルCaliber 0200そしてCaliber 0210は誕生しました。その背景にはどんな思いやこだわりがあるのか?開発を担当した時計開発エンジニアの土屋建治に話を聞きました。
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シチズン時計は1918年の創業以来、機械式時計の製造を続けてきました。1960年代頃から時計の電子化が始まりまして、我々もそれに積極的に取り組んで、例えば光をエネルギー源とする「エコ・ドライブ」の技術を用いた完成度の高い製品を世に送り出してきた歴史があります。
一方でシチズンは機械式時計のアーカイブモデルを多数持っておりますので、高品位な機械式時計をぜひ作ってみたい……そんな強い思いが開発陣にありまして、始まったのが2021年に誕生したメカニカルモデルCaliber 0200の開発になります。
機械式時計の本質的な価値は、この小さなものの中に精緻さと美しさが凝縮されていることにあると思います。それを腕に纏う充足感と言うのでしょうか。機械式時計はとても綺麗で良いなという感覚、思いが沸き起こってくる製品を作りたいと考えていました。
創業からシチズン時計が目指してきたのは、いかに品質の高い部品を作り、それを組み立てて精度の高い時計を作るかということで、我々のDNAと言っていいと思います。その観点からテーマを定めまして、1つ目はやはり精度です。シチズン時計が得意としている部品の精密加工技術につながるところで、具体的にはISO(国際標準化機構)で定められているクロノメーター規格よりも上の実力を目指そうという目標を設定しまして、平均日差でマイナス3秒からプラス5秒の精度を実現しました。そのために例えば、てんぷもフリースプラングタイプという機構を導入しまして、初めてのチャレンジだったのですが、緩急針という部品を無くすことで、より精度の安定性を高めることを目指しました。
そうですね。もう1つのテーマが審美性になります。我々は日本のブランドですので、日本のモノづくりを体現するようなムーブメントデザインを目指しました。具体的には、直線を基調としたブリッジの形状。直線を基調とすることで、より精度が高く作り込んだイメージを与えています。そして、その直線に沿うように施された面取り、いわゆるダイヤカットですね。ダイヤカットでしっかりと直線的な反射をさせることで、工業的に高いレベルで作られた非常に精緻で精度の高い製品だと身に着ける方に感じていただくことを目指しています。
はい、審美性のもう1つの要素としては、機械式時計ならではの楽しさを追求していますから、歯車の配置、輪列と呼んでいますが、その輪列も美しく配置したいと。歯車を美しく配置することで、ムーブメント全体を美しくまとめるという工夫も施しています。インデックスの6時位置に小秒針を配置したのも、その意図によるものです。
ムーブメントの輪列の美しさに加えまして、これは作ってみて分かったことでもあるのですが、小秒針として秒針を独立させると、秒針の動きに集中できますから、見た時の印象として、精度の高さをより感じていただけるという点が大きいです。
また、小秒針そのものについてもプロダクトとして精度感を追求しています。ムーブメント設計の段階で、最も小秒針が見やすく美しく見える配置で座標を決めて、針の長さについてもしっかりと目盛りの上に合うように、見間違えがないような配慮を行って、この小秒針の形になっております。
はい、Caliber 0200は精度を追求したムーブメントであり、なおかつ個性的なシチズンらしいムーブメントデザインですから、やはりそれにマッチする外装のデザインも求められるだろうと。Caliber 0200の開発では、外装のデザイナーやムーブメントの開発者・企画者が密に話し合いながら、1つの製品としてまとめていきました。
精度感が感じられるケースのデザインを追求して、ラグ(ケースとブレスレットを連結する部分)が表から見えないタイプのケースを採用しています。「ラグレスケース」と呼んでいますが、直線と直線を結ぶことで精度感を表現して、ムーブメントのテイストとマッチしたものができたと思います。
実は1960年代からシチズン時計が先進的な製品を開発する際に、積極的に採用してきたのがラグレスケースです。ただ、過去のモデルを復刻したわけでは当然なくて、例えばブレスレットとケースの一体感であるとか、要所要所でより現代的にブラッシュアップを重ねてこの形に仕上げています。
はい、文字板とガラスの隙間や針と文字板の隙間、ムーブメントと裏ぶたガラスの隙間などを、いかに最適化していくか?その他にもムーブメントが美しく見えるように、裏ぶたガラスの大きさを決めたり……これらは外装のチームとムーブメントのチームが協働で実施しました。今回の開発でとても嬉しかったのは、外装の設計担当者がムーブメントの担当者に「どういうデザインにしますか?」と聞いてくれたことです。お互いにプライドがあるなかで「良いものを作っていこう」という意識が相乗効果を生んで、より完成度の高いモデルを生み出せたと感じています。
ええ。やはりこだわったのは、Caliber 0200の完成度の高さを継承することです。精度と審美性の両立を継承しながら、より実用性を高めるべくデイト表示の追加と10気圧防水へとアップデートして、お客様の多様なニーズに応えるモデルを目指しました。
デイト表示を追加するということで、まずデザイナーの方で最適なデイト表示サイズを算出しまして、それをムーブメントの設計に落とし込む手順を踏んでおります。Caliber 0210はThe CITIZENメカニカルモデル専用のムーブメントとして制作していますので、デザイナーが完成品として最も理想とするサイズを、そのままムーブメント設計に反映していることが大きな特徴になります。
デイト表示を追加するにあたって、カレンダー機構が追加になるわけですけど、追加した分がそのまま厚みのアップになってしまっては、装着性が損なわれてしまいます。そうならないためにも、なるべく厚くならないように、地板を掘り込んでいって、そこに部品を収めて、かさ上げする部分と掘り込んでいく部分をうまく組み合わせることで、0.3ミリの厚みの変化にとどめております。
Caliber 0210だけでなく、Caliber 0200も含めての話になりますが、ブレスレットの付け根のデザインについては、こだわりが詰め込まれている箇所ですね。見ていただくと分かりますが、1本ミラー面が入っていまして、これがブレスレットとケースの境目になります。一体感のあるブレスレットデザインなのですが、ミラー面を1本入れることで、ヘッドの形がしっかりと綺麗に見えるような工夫を施しています。
機械式時計で目指すべき大切な要素の1つは、良い感覚。特に操作にまつわる感覚だと思っています。最終的にお客様に心地よく使っていただくことが、ゴールになりますので、例えばりゅうず(時刻や日付を調節する際に使用する部位)を引いたときの心地よさ、節度感と言いますが、心地よい引き心地、さらにゼンマイの巻き心地についても試作を繰り返して、最も心地よく間違いのない操作ができる設計になっています。
そうですね、機械式時計は感覚なんです。その良い感覚を得るには、どうすればいいかというと、歯形の設計であるとか、それをいかに精度高く加工するかに懸かっています。設計と製造の精度がうまく組み合わさって、初めてできるものですから、りゅうずを引く、巻くといった操作を通じて、シチズンのマニュファクチュールとしての設計の力と製造の力を感じていただけるのではないかと思います。
時間精度を高める開発も、ムーブメントを美しく仕上げる開発も、いずれも我々の力を高めていくものであり、その高めた力は将来にわたって活用できるという思いがあります。高品位な機械式時計を作る技術は、次の代にも受け継がれていって、日本で素晴らしい機械式時計が作られ続けてほしいと思いますので、精度を高めること、審美性を高めることは継続して、今後も開発テーマとして進めていきたいと考えております。
Caliber 0200/0210は、シチズンらしいムーブメントデザインであるとか、時計の歯車の配置であるとか、細かな部分にも施された部品の装飾・仕上げであるとか、精度感とマッチした外装のデザインであるとか⋯⋯こだわりは数限りないですが、一切の妥協を排して完成度を高めた製品ですので、ぜひこの時計を身に着けて、その味を体験いただければと思います。
文字板に用いる和紙を漉く手、
素材・原料を吟味する手、
デザインをおこす手、時計を組み立てる手……
人生に永く寄り添う腕時計であるために。
次なる理想に挑みつづける「The CITIZEN」は、
モノづくりへの情熱を秘め、
卓越したクラフトマンシップが息づく
数多くの手のリレーによって生み出され、
その末に身に着ける方のその手に届けられています。
Hand to Hand Story では、
多岐にわたる時計づくりの工程で、
欠かすことのできないさまざまな
熟練の「手」に毎回スポットライトを当て、
そこに秘められた技術や想いを紹介していきます。
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