Next Level Quality
メカニカルモデル
Caliber 0200/0210組立
シチズン時計マニュファクチャリング株式会社
南信州高級時計工房(長野県)
荒井:はい。The CITIZENの組立はマイスターが行うことになっていまして、現在はCaliber 0200/0210を含めて、The CITIZENの側付け(ムーブメントをケースや文字板と組み付ける工程)を受け持ちさせていただいております。入社して15年間、完成品の組立を担当しまして、次の20年間は時計内部のモジュール(部品)組立を担当。その後はシチズン社内で指導を行う部署を経て、現在は再び完成品組立の部署に戻ってきて、今年で44年目になります。
古林:私は今年で17年目になります。現在はCaliber 0200/0210を含めて、The CITIZENなど高品質時計のムーブメントの組立を主に行っています。
荒井:そうですね。The CITIZENは光発電のエコ・ドライブ、機械式時計を問わず、部品点数が多く、サイズもミクロの部品になりますから、ムーブメント組立から、そのムーブメントをケースなどに組み付ける作業、そして文字板の針付けまで、すべて手作業で行っております。
荒井:The CITIZENはやはり高品質な時計ですので効率を追求するものでもないですし、丁寧に作られた繊細な部品をムダにしないために、極限まで集中力を高める必要がありますから、1人ひとり専用の作業机で丁寧に組み込みをしております。
荒井:もちろん、どの時計も気を抜けないのですが、Caliber 0200/0210に関しましては、各部品の取付位置が緻密に決まっていまして。特に「針の取り付け」は、時針とデイト機構が連動しているので、デイトが切り替わる場所に正しく時針を取り付けねばならず、数ミリの狭い隙間へ時計の針を2本も取り付ける難しい作業です。針を抜いてやり直すということはできないので、1回で取り付け位置を決めなきゃいけない。さらに、輝く針を取り付ける際もキズを付けることがないように、凄く神経を使います。
古林:他の時計は、ある箇所でグッと難しくなったりしますが、Caliber 0200/0210に関しては、逆に気を緩ませるところがまったくなくて難しいという……精神的にすり減らされるっていうのは、正直かなりありますね。
古林:Caliber 0200/0210などの機械式時計は、精度がどこまで出るかというのが面白いところですね。機械式時計ではないエコ・ドライブもThe CITIZENは部品点数が多いですので、それを綺麗に無駄なく組めると「やったな」なと。
古林:そうですね。複雑な機構の時計は部品が多くあって、当然やりがいがありますし、薄さを追求した時計の場合は、部品点数は少なくなりますが、審美性を徹底的に追求していますから、一段上の扱い方が求められて、気持ち的にもプレッシャーが上乗せされるので、そこが面白さでもあると思います。
荒井:何よりも心を整えるということが大切だと考えています。毎日40〜45分前には出社して、作業机の掃除を始めるようにしております。やはり5分でも遅れると通勤時の道路の混み具合も違いますし、始業に間に合うかどうかドキドキしてしまって……心のリズムも乱れてしまいますから、呼吸を整える意味でも朝は余裕を持って出社するようにしています。
荒井:そうですね。仕事にかかる前には、机を毎日同じように拭き上げて掃除をしますし、集中力を保つことが大切な職場ですので、普段の生活スタイルを変えないということを意識しています。
古林:私はお腹が空いていない状態で作業にあたるようにしています。お腹が空いていると、空腹に気をとられてしまって、集中力が削がれてしまいますから。
荒井:私もそうで(笑)。食はやはり大切ですよね。朝昼晩はよく食べて、食は抜かない、寝る前は食べないとか。本当に基本的なことですけれど、生活リズムを崩さないことは徹底して行っています。
荒井:はい。Caliber 0200/0210は、ネジも1つひとつ専用で作られていますので、当然それにあったドライバーを使わないとキズを付けてしまいますから、Caliber 0200/0210専用の道具を使いますね。
荒井:Caliber 0200/0210に関しては、審美性が追求された研ぎ澄まされた時計で、針も輝いていますから、針押さえも毎日手入れしておりますし、針を持つピンセットについても、針を付けた後にピンセットの跡が付くことのないように、毎日メンテナンスをして磨きをかけております。
荒井:ええ。作業を終えた後のメンテナンスはもちろんですけれど、次の朝、準備を行う際に、手入れがしっかり足りているかどうか、もういちど念入りにチェックすることも欠かせないことです。足りていない部分があれば、手入れを行って……この繰り返しが日常になりますね。
古林:やはり時計を購入してくださるお客様がいらっしゃるので、その立場になって「自分が購入した時にこの出来栄えで納得できるか?」という基準で、これで良いのか、ダメなのかを判断していますね。対価を払って購入いただくので、「買って良かったな」と思っていただけることを一番大切にしています。
荒井:その意味では、やはりどうしても自分で作ったものは甘くみてしまうので、そういうことのないように……組立の途中段階で、別の視点を入れるということをしておりますね。他のマイスターの方に、私が組み立てたモノを見てもらいますし、他の方が担当したものは私が責任を持って見る。目を変えるということは、お客様目線で見るということにもつながるのかなと思います。
荒井:はい。マイスターになってから、シチズン社内の時計づくりの技術向上や資格取得を応援する「時計学校」という部署に配属になって指導した時期がありまして。社内の皆さんには国家試験の技能検定を受けていただいているのですが、現在の完成品組立の部署に戻ってきてからもそちらの指導でしたり、社外の方への講習会の講師にも行かせていただいております。
荒井:スーパーマイスターという称号をいただいたのが、56歳の時だったんですね。シチズンという看板をズシっと渡された気がして、凄くプレッシャーを感じたことを今でも覚えています。2018年のシチズン創業100周年の際には、日本全国のいろいろな場所に行って、お客様の前で時計の組立の実演をすることも毎月1回、2回ありました。スーパーマイスターということを皆さんに知っていただいてからの実演だったので、凄く緊張しましたが、帰りに声を掛けていただいて「シチズンのファンになりました」「今日、買っていくからね」とおっしゃっていただけると、「あぁ、私の役目はこういうことなんだな」と凄く実感する機会にもなりましたね。
荒井: Caliber 0200/0210はシンプルではあるのですが、重厚感がある時計だなと作業のたびに実感します。お客様が手に取って、目に飛び込んでくる針と文字板の美しさに惹かれて、背面を眺めると、動く錘やてんぷはもちろん、こだわりのある受けのパーツの美しさに目を奪われる……他には表せない表情、美しさを持っているので、人生を共に歩んでいただける時計なのかなと思います。
古林:Caliber 0200/0210は、組み立てていると分かることですけれど、時計の中のパーツ1つ1つまで全部「目付け(デコレーション)」がされています。これは凄いことで。組立を行うたびに、シチズンの開発陣の強いこだわりを感じながら、作業しています。
古林:そうなんです。残念ながら、お客様にはご自身の目で見ていただくことはできないですし、またThe CITIZENはメーカー修理対応品なので、外部の方がムーブメント内部を開けることもないのですが、見る人が見れば「こんな細かなところまで目付けが施されているのか!」という面白さ・こだわりを発見いただける時計だと思います。
古林:「自分の子ども」と言うと少しおかしいのですが、子供を育てるように慈しみながら大切に丁寧に組み立てて作っていますので、大切に長く愛用いただけると嬉しいですね。
荒井:Caliber 0200/0210は高品質な時計ですので、購入いただいたお客様の人生と一緒に歩んでいただける時計だと組み立てていても感じます。大切に大事に使っていただければ、作る立場としてとても嬉しいことですね。
文字板に用いる和紙を漉く手、
素材・原料を吟味する手、
デザインをおこす手、時計を組み立てる手……
人生に永く寄り添う腕時計であるために。
次なる理想に挑みつづける「The CITIZEN」は、
モノづくりへの情熱を秘め、
卓越したクラフトマンシップが息づく
数多くの手のリレーによって生み出され、
その末に身に着ける方のその手に届けられています。
Hand to Hand Story では、
多岐にわたる時計づくりの工程で、
欠かすことのできないさまざまな
熟練の「手」に毎回スポットライトを当て、
そこに秘められた技術や想いを紹介していきます。
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