BEN REYMENANTS
ベン・レメナント
インタビュー
テクニカル・ダイビング・インストラクター
PHUKET
「ダイビング・インストラクターとして30年のキャリアを誇るベン・レメナント氏は、約8,800回のダイビングの経験がある。2010年からはプーケットでテクニカル・ダイビングの会社を経営。2018年にはモンスーンがもたらす雨によってタイの洞窟に閉じ込められた12名の男子生徒を救うため、タムルアン洞窟の救助隊にも参加したこともある。そんな彼からプーケットについて話を聞いた。」
— リック・グレハン
- プーケットはどんなところですか?
プーケットはタイ南部にある島で、絵に描いたように美しい場所です。緑が生い茂る山々、青い海、そして白い砂浜にはココヤシの木があります。重要な貿易ルートでもあったので、ダイバー向けの沈船ポイントも数多くありますし、さまざまな種類のサンゴ礁や魚類も生息しています。ダイバーにおすすめなのは、沈船「キングクルーザー」です。沈んだ双胴船に紫色や白色のソフトコーラルがついて岩礁となり、魚の大群が引き寄せられていきます。マンタや小型のサメ、バラクーダなどの遠海魚を見たい人は、ラチャノイ島がおすすめです。
- プーケットで働き、
暮らすことを決断した理由は?
もともとメキシコでダイビング・インストラクターをしていたのですが、アジアに惹かれて、数ヵ月の滞在のつもりでタイに来たのが、もう21年前の話です。ここの美しい自然はもちろん、ゆったりとした暮らしに魅了されました。最初はリブアボード(ダイブクルーズで使われる寝泊りのできる船)でダイビングガイドをしていましたが、その後、海岸から離れた場所で沈船を見るレックダイビングのためのテクニカル・ダイビングの会社を設立しました。それから、地元の減圧室でのボランティアに参加し、ケガをしたダイバーをケアしているうちに、高圧療法に夢中になり、それをフルタイムの仕事とするようになりました。今、私が所属しているブルー・ラベル・ダイビングという会社は2010年に設立しました。沈船や洞窟に安全に入っていけるよう、また深海にあるサンゴ礁を探検できるよう、テクニカルダイバーの訓練を行っています。私自身の潜水深度記録は239メートルです。
- 水中での時間は、
地上とどのように違いますか?
アクティビティにもよりますが、サンゴ礁の中をゆっくり進んでいるときは、瞑想のように感じます。深海の洞窟を探検しているときは、時間があっという間に過ぎてしまいます。ただ何をしているときでも、海の中での時間は地上よりも早く進みます。時間とは、人類が自らに定めたパラメーターではありますが、海中を冒険しているときは、信頼できる腕時計はなくてはならない存在の1つです。
- プーケットの海の生態系は、
今どのような状態ですか?
タイでは、2010年のエルニーニョ現象の余波でかなりのサンゴ白化が起きましたが、この10年でサンゴ礁は回復してきたようです。最大の脅威は魚の乱獲とトロール網です。環境保護団体や、ゴーストネットの回収、年一回のビーチの清掃活動などの保全活動もありますが、漁業がきちんと規制されない限り、ほとんど希望は持てません。
また観光客が増えていくことで、海産物の需要が増え、海底にあるプラスチックごみの量が増加しています。私たちのダイビングセンターでは、再利用可能な水のボトルを配布したり、ステンレス製の容器に入った食べ物を注文したりすることで、この問題への認識を広める努力をしています。タイには、海洋生物学や環境意識を高める学問を学べる大学がいくつかありますが、やるべきことはまだたくさんあるのです。
INTERVIEWBY
CREATIVE DIRECTOR / FILM MAKER
RICK GREHANリック・グレハン
「ベンのストーリーはユニークだ。世界記録を保持する深海ダイバーであり、自身を危険にさらしながらも大洋の辺境を探検し、未開のエリアへの世界の関心を集めるための活動をしている。私が感銘を受けたのは、やりたいことを達成するために、彼が習得した、たった1つのミスをも許さないダイビング技術のレベルの高さだ。ベンが環境保護活動家となったきっかけは、今まで誰も見たことのない海の底で、人造プラスチックを発見したことだったという。ベンは、タイでは海は「黒い水」と呼ばれていると話していたが、見えないからと言って、それが私たちとは関係ないと考えることは許されないだろう。」