自律型年差時計

純度の高い1秒を

自律型年差時計とは、標準電波などの時刻情報に頼ることなく、時計内部の機構の力だけで、1年間を数秒の誤差内で刻み続ける技術のこと。たとえば年差±1秒は、1年(31,536,000秒)という膨大な秒数をわずか1秒以内の誤差で刻み続けます。1秒1秒を正確に大切に刻む。シチズンは、限りなく純度の高い1秒という挑戦に、まっすぐに向き合い続けています。

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この時計が紡ぐのは、ただの1秒ではなく、限りなく純度の高い1秒。研ぎ澄まされ、洗練され、瞬間と永遠を同時に表現するような奥行きのある時。1秒というごく短い時間の中に、尊さや、豊かさ、可能性を感じるのはそのためです。

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秒針と切分が、ぴたりと同一線上に重なる。1秒を目で感じてほしいという思いから、優雅でシンプルな文字板は生まれました。ただひたすらに、自らの機構のみで時を刻み続ける。限りなく純度の高い1秒をあなたに。
*切分とは、文字板上のメモリのこと。
※Caliber 0100搭載モデルが対象になります。

About Annual Accuracy

自律型年差時計には
こんな技術が詰まっています。

限りなく純度の高い1秒を刻む。

年差とは、年間での時計精度を表す指標です。高精度の自律型年差時計をつくるためには、驚くほど緻密な技術が必要となります。シチズンは、水晶振動子、回路、歯車など部品の一つひとつに至るまで、徹底した精度を追求。時計の力だけで正確に時を刻むために、長年にわたり培ってきた技術を集結し、自律型年差時計のさらなる進化を生み出しています。

わずかな誤差が、
大きな誤差に。

クオーツ時計は、一定の周期で振動する水晶の特性を応用して1秒を刻んでいます。機械式時計に比べてはるかに正確なクオーツ時計ですが、実は温度や重力などの外部要因が水晶振動子に加わることで周波数が変化し、ごくわずかな誤差が生じます。通常の時計なら、何の問題もない範囲です。しかし、自律型年差時計では、このわずかな誤差が無視できない大きな誤差になります。たとえるなら、フルマラソンのランナーが、脚に感じる気にならない程度の小さな小さな違和感を見逃せないことに似ています。

水晶振動子 厳選した水晶振動子のみを
使用しています。

水晶振動子の品質は、精度に大きく影響します。シチズンで使用する水晶振動子は、一定期間、周波数の計測を行い、経時変化の少ないものだけを厳選して使用しています。ムーブメントに組み込んだ後も継続して繰り返し計測し、基準をクリアした水晶振動子だけを腕時計に組み込むことで、年差という精度を生み出しています。

歩度調整 完成しても
完成ではありません。

精度の追求は、時計の組み立てが完成して終わり、ではありません。組み立て後、完成した時計の状態で再び歩度測定器にかけ、わずかなズレを計測し、調整していきます。こうして厳しい基準をクリアした時計だけが、市場へと出荷されます。

年差±1秒を生み出す
特別な水晶振動子。

Caliber 0100を搭載した年差±1秒モデルでは、その小さな誤差を限りなくゼロに近づけるために、通常のクオーツ時計に使用されている「音叉型水晶振動子」に代わり、主にコンピューターなどのデジタルデバイスに使用される「ATカット型水晶振動子」を採用することに挑戦。通常の256倍もの周波数により、1秒1秒を正確に刻む時計をつくりあげました。このATカット型水晶振動子には、温度変化に強い、重力の影響を受けにくい、そして経時変化しにくいという3つの特長があります。

TEMPERATURE 特長① 温度変化に、強い。

水晶振動子は、六角柱の水晶の原石から切り出してつくります。その際、切り出し角度によって「温度に対しての周波数変化量」が異なることがわかっています。ATカット型水晶振動子は、常温付近の温度安定性が優れているため、寒暖差の影響を最小限に抑えることが可能。季節が変わっても、朝夕で気温が変化してもリズムを崩しません。

GRAVITY 特長② 重力に、影響されない。

腕時計は、腕に着けて使うものなので、日常生活の中で、振ったり逆さまになったりします。実は重力や姿勢は、わずかながら水晶振動子にも影響を与えます。従来の音叉型水晶振動子は中空で振動する“脚”を持つために時計の向きを変えるだけでも誤差が生じていました。ATカット型水晶振動子は、この“脚”がなく安定性が高いため、姿勢差の影響を極限まで低減。腕時計をどんな向きにしても重力の影響を受けにくいのです。

AGING 特長③ 経時変化が、小さい。

ATカット型水晶振動子は、音叉型水晶振動子に比べて経時変化(時間の経過により性質が変化すること)が小さいという優位点もあります。このため、長期間使用しても、水晶振動子の性能が維持され、年差±1秒という精度で正確な時を刻み続けることができるのです。

低消費電力技術 年差±1秒を、光発電で。

シチズンの光発電技術エコ・ドライブで年差±1秒を実現するためには、消費電力の課題がありました。ATカット型水晶振動子は、通常のクオーツで使用される音叉型の256倍もの周波数で動作しているため大きな電力を消費します。光発電のエコ・ドライブで時計を動かすためには、徹底した低消費電力技術が必要になります。いかに小さな力で、正確に長く動き続けられるか。シチズンが長年培ってきた低消費電力技術があったからこそ、年差±1秒 エコ・ドライブの腕時計が生まれたと言っても過言ではありません。

年差という精度を
守り続けること。

腕時計は、日常で使用するなかで、温度変化や衝撃などで時刻がズレてしまうことがあります。正確な1秒を刻むために、シチズンでは腕時計自体に温度変化や衝撃から守る機構を組み込み、お客様のもとへ腕時計が届いた後も、想像を超えた技術で年差という精度を支えています。

温度補正機能 1分に1回。温度を測定します。

腕時計の頭脳である回路にも、独自の技術を注ぎ込みました。それが温度補正機能です。1分に1回。つまり1日1,440回、自動的に時計内部の温度を測定。温度変化による水晶振動子の発振周波数の変動を絶えず補正することで、高精度を維持し続けています。

衝撃検知・針自動補正・耐磁性能 外部刺激から正しい時刻を守り抜く。

腕時計を日常で使用するなかで時刻のズレを防ぐためには、温度のほかにも衝撃や磁力などの外部刺激から守ることも大切です。このため、衝撃を受けると瞬間的にローターをロックして針ズレを防止する「衝撃検知機能」や、一定時間ごとに針位置を計測してズレを確認し正しい位置へと修正する「針自動補正機能」、直流磁界4,800A/mまで耐えられる「JIS 1種耐磁性能」の3つを備えたパーフェックスを搭載。万一の際に備えた機能で、正確な1秒を刻み続けます。

1秒の美しさを
表現する。

年差±1秒モデルにおいて、ATカット型水晶振動子によって生み出された純度の高い1秒を、どうしたら美しく表現できるか。正確な時を刻むためには、部品の一つひとつが精密でなければなりません。高精度への挑戦は、シチズンが部品から完成時計までを自社でつくることができる、マニュファクチュールだからできた技術なのです。

秒針と切分 同一線上に重なる瞬間の美しさを。

腕時計を正面から見た時に、秒針が切分と美しく重なる瞬間を表現したい。そのために、年差±1秒モデルでは秒針を長くし、切分と同一線上に重なる瞬間が見える、特別なデザインにも挑戦しています。また、年差±1秒モデルの象徴でもある秒針には、重厚感のある美しい仕上げの真鍮製の針を採用。1秒の美しさを目で味わってほしいという思いから、限りなくシンプルなデザインを追求しました。

バックラッシュ抑制機構 歯車の「あそび」を抑える。

腕時計は、歯車が噛み合う際にできるあそび(バックラッシュ)により、秒針がブレて見えることがあります。通常のクオーツ時計では気にならない現象ですが、これも年差±1秒モデルでは無視できないもののひとつです。シチズンでは特殊な形状のバネを組み込んだ「三番戻し車」を独自で開発。歯車のバックラッシュを抑制し、針がブレることなく、切分の同一線上に美しく重なりながら1秒1秒を潔く刻み続けます。

LIGA工法 一つひとつの部品をより高精度に。

1秒の美しさを表現するためには、精密な部品づくりが不可欠です。そのため、年差±1秒モデルでは、微細構造物成形技術のひとつであるLIGA工法を採用。歯車のわずかな偏心をなくし、今までにない高精度な部品をつくりあげています。

Annual Accuracy Story

自律型年差時計の
挑戦と進化のストーリー。

世界初、
年差±3秒時計、誕生。

従来の機械式時計に代わり、1970年代にクオーツ時計が台頭します。機械式時計に比べて精度の高いクオーツ時計でしたが、当時は月差の単位で表記される時計がほとんどでした。そんななか、高精度に挑んだシチズンは、世界初の年差±3秒以内を実現した超高精度クオーツ「クリストロン メガ」を発売。発売時の価格は4,500,000円と高価なもの。月差から年差へ。エポックメイキングなこの時計は、これまでの時計精度の概念を一新しました。

温度補正機能、
生まれる。

「クリストロン メガ」で技術の可能性を見出したシチズンは、1980年代に入ると一般に広く高精度な時計を開発していきます。1981年、IC内に温度変化による水晶振動子の発振周波数の変動を補正する機能を世界で初めて搭載した、年差±10秒の時計「CITIZEN EXCEED」を発売。このモデルは、のちに国立科学博物館の未来技術遺産(重要科学技術史資料)にも登録されました。また、この時に開発された温度補正機能の技術は、2019年に発売される年差±1秒の超高精度エコ・ドライブムーブメント Caliber 0100にも生かされています。

世界初、
年差±5秒のレディスウオッチ。

メンズウオッチに比べてサイズの小さなレディスウオッチでも、時計精度の追求が進みました。1996年には、The CITIZENから世界初の年差±5秒のレディスウオッチが誕生。年差時計のデザインの幅も大きく広がりました。

世界初、光の力で動く
年差時計の誕生。

1997年には、世界初の光発電時計で年差±10秒を実現した「EXCEED ユーロス エコ・ドライブ」が誕生。交換式の電池を使用するのではなく、光の力だけで動かす時計で年差の精度を実現するために、シチズンはこの時計のためだけのムーブメントを新規で開発。年差時計が新たな動力源を獲得した瞬間でした。

レディスでも
光発電による年差時計が。

世界初の光発電による自律型年差時計が誕生した翌年、女性用エコ・ドライブで世界初の年差±10秒を実現した「EXCEED ユーロス エコ・ドライブ」が誕生。インデックスの斬新なレイアウトも個性的でした。

光発電で、
年差±5秒を実現。

2011年、これまで光発電エコ・ドライブによる最高精度は年差±10秒でしたが、これを大きく上回る、年差±5秒を実現した時計が、The CITIZENより発売。「正確な時を刻むこと、見やすいこと、長く使えること」という時計の本質を追求するシチズンの旗艦ブランドであるThe CITIZENを体現するモデルとなりました。

世界最高精度
光発電で年差±1秒を実現。

長年にわたり時計の精度を追求してきたシチズンが生み出したのが、年差±1秒の世界最高精度エコ・ドライブムーブメント「Caliber 0100」です。2018年には、初めてCITIZENの名を冠した1924年発売の懐中時計にオマージュを捧げたポケットウオッチタイプのコンセプトモデルを発表、2019年にはシチズンのフラッグシップブランドであるThe CITIZENからCaliber 0100を搭載した腕時計を発売。純度の高い1秒を刻むという使命を掲げ、最新技術を集結し、1年間で誤差が±1秒以内という腕時計を光発電エコ・ドライブで実現しました。
*アナログ式光発電腕時計(自律型)として。2022年9月末時点、当社調べ。

挑戦の旅に、
終わりはない。

時計内部の機構の力だけで、1秒1秒を正確に刻み続ける自律型年差時計。日差から月差へ、月差から年差へと大きく精度が向上した半世紀を経て、年差±1秒という、これ以上超えられないと思われる精度までたどり着きました。しかしシチズンは、これが最終形とは思っていません。もっと高精度に、もっと小さく、もっと軽く、もっと長く、もっと美しく、もっと…。この思いがある限り、挑戦の旅は終わることはありません。

※ 現在は生産されていないモデル、日本未発売モデルも掲載されています。