髪の毛よりも細い部品。顕微鏡でないと見えないほどの小さな部品。腕時計はこうした想像を超える極小の部品が何百パーツも集まってつくられます。ねじ、歯車、バネ、コイル、モーター。機械式ならばヒゲゼンマイまで。シチズンでは、どんな小さな部品も自分たちでつくることができます。
一つひとつの部品は精度が高く、また複雑な形状のものも多いため、通常のマシンではつくれないこともあります。だからシチズンでは、部品をつくる工作機械や、手作業で使用する道具さえも自分たちでつくります。時には、その機械を動かすためのオイルまで自分たちでつくります。シチズンの工場では、「CITIZEN」のロゴが入った工作機械が日々稼働しています。
美しい腕時計をつくることは、シチズンの使命です。そのため、主要技術の光発電「エコ・ドライブ」を搭載する腕時計では、ソーラーパネルを文字板の下や外周部に配置するなど、見えないように工夫することで文字板に美しさを施しています。この工夫には独自のノウハウが不可欠です。シチズンが文字板を自分たちでつくっている理由はここにあります。魅せて見せない文字板づくり。これも、マニュファクチュールだからできることのひとつです。
シチズンでは、クオーツ時計の水晶振動子さえも自社で開発しています。名品とされる腕時計は外装の美しさに着目されがちですが、実はその内側にこそ腕時計の魅力をかたちづくるストーリーが隠されているのです。
2019年に発売された「Caliber 0100」は、年差±1秒という人類が携帯できる自律式の腕時計として世界最高の精度を達成しましたが、この超高精度を実現するために、ムーブメント内の水晶振動子そのものの素材選びから、カットの仕方、回路の効率化まですべての開発を自分たちで行いました。正確な時刻がスマートフォンに表示される時代に、自律式で高精度な腕時計を実現する。それは技術者による腕時計への愛や情熱、そして執念の賜物であり、マニュファクチュールでなければつくり出すことはできない。それがシチズンの考え方です。
ディテールにこだわり、高精度を求め、時計を構成する一つひとつの部品から製造するからこそ、本当につくりたい時計をつくることができる。どんなに手間がかかっても、どんなに困難な課題でも、自分たちで研究開発し、試験を重ね、かたちにしていく。これが、シチズンが時計を部品から自社で一貫製造することができるマニュファクチュールである理由なのです。