PEOPLE 02
RYO OGURI
DIRECTOR/ NAC代表
一秒の狂いが生死を分ける舞台の世界。
楽しい一秒を刻みたい。
人生に無駄な時間はないから。
音楽・演劇などのエンターテインメント公演から記念式典などのフォーマルなイベントまで、多様なジャンルで舞台・演出ディレクターとして活躍しているのが小栗了さん。
舞台ディレクターという多忙な日々のなか、演出家として「ムーミンバレーパーク」の舞台公演の演出なども手掛け、2021年には自身のプロデュースする演劇施設の竣工も予定している。ナマモノである舞台とは激流のようで、一秒の判断の違いが公演の成功を決める。それを操る小栗さんにとって「時」は切っても切り離せないものだ。
「舞台の世界に入ったのは18歳の頃です。父がオペラの舞台監督の仕事をしているので、幼い頃から舞台の世界は日常でしたね。でも最初にその世界に入った動機は不純で(笑)。高校卒業後米国に渡って役者の修行がしたくて、その資金を貯めるバイトとして父の舞台裏で働いていたんです」
米国で「演出される側」として数々の経験を積んだ小栗さん。帰国後、舞台演出を手掛け る会社「株式会社NAC」の代表取締役社長となり、本格的に舞台裏の世界へと足を踏み入れることになった。演劇からクラシックコンサート、表彰式・コンテストのほか、格闘技までジャンルレスな演出を行なっている。
「僕は欲張りなんですよ。どの仕事もそれぞれの面白さがある。今日は表彰式の現場でしたが、出場する人にとっては人生で一度の晴れ舞台かもしれない。僕たち裏方の仕事は、ステージに立つ人が一番輝いて見える場所を設えるということ。ステージの上でトロフィーをもらったときの笑顔に、グッときます」
取材当日、演出を手がけるイベントは客席数2,000人を超える劇場での表彰式。 ステージ上でスポットライトを浴びる受賞者を称える2,000人の姿は壮観の一言。この「感動の瞬間」を作り上げるのが小栗さんの仕事だ。
舞台裏の小栗さんの姿で印象的だったのが、あらゆるスタッフに気を使い、円滑なコミュニケーションを図り、現場の雰囲気を「楽しい」ものにしていること。
「舞台は一人で作れるものではありません。僕にも至らないところはたくさんあります。ですから、照明や音響などのプロフェッショナルなスタッフたちとの信頼関係を作り上げることは絶対必要なんです。「しょうがないな、小栗のためならやるか」って皆が言ってくれる存在になれるか?普段から気をつけているのは、「絶対に嘘をつかない」ことですね」
トップであっても、自分に非があれば謝罪し、相手を信頼し相談する。そういった誠実な態度は、小栗さんがかつて父に言われた「しっかり謝らないと、自分をごまかして生きることになる」というアドバイスが心に残っているからだという。
「でも、演出に妥協はしません。現場にとっては無理なことを言うことにもなるわけですが、それでも皆、プロフェッショナルだからいいものを作りたいという気持ちは同じ。絶対に諦めないでやり遂げてくれる。僕が一緒に仕事をしている人たちは、そういう人たちなんです」
現在上演中の「ムーミンバレーパーク」の舞台では、一般的に「こども向け」と思われるコンテンツにも、小栗さんならではの狙いを持って演出をしている。
「日本ではムーミンはこども向けと思われていますが、フィンランドでは、ムーミンはアートとされているので、そこで大人がみても感情をうごかされる台本と演出を心がけました。30分の演劇ですが、2ヶ月間毎日稽古をつけて…」
「いろいろ挫折もしました。会社を畳もうかと悩んだ時期もあったし、僕は天才には絶対なれないと思った。でも、天才じゃなくても、努力し続けていれば、平均点のちょっと上は取れるんじゃないか?と自分に言い聞かせました。僕の小さな誇りですが、仕事において一度呼んで頂いたらその後も任せて頂けるんです。例えばちょっとしたイベントのオープニングでも、人間の「鳥肌が立つ瞬間」のツボのようなものがある。どんな場所でも、常にそれを生み出していきたい」
常に期待に応え続けること。難しいことだが、作っている現場の雰囲気が楽しいものだ と、観客にも不思議とそれが伝わるのだという。
一分一秒を争う世界に生きる小栗さんが、アテッサを手にした印象は、「個性がある時計」というもの。
「パッと見た瞬間にすごくかっこいいし、シルバーでも黒でもない、この絶妙な独自の色がすごく個性的ですよね。動き回る仕事なので、軽いのも魅力です。僕たちのような職業では、人と違うこと、が重要なんです。これだけの個性があると、正直男子としての心をくすぐられるものがありますね」
スーパーチタニウム™ならではの軽さ。素材の表面をプラズマ化したイオンガスでコーティングすることで醸し出る大人の男を感じさせる色合い。またGPS衛星電波時計なので海外出張の際、スムーズに現地の時間に切り替わるのも小栗さんにとってのメリットだという。
「この時計を着けていれば、楽しい一秒が作れそうですね」
と笑う。実は高校時代に、田無のシチズン本社の前を自転車で毎日通っていたのだという思い出を語ってくれた。
取材当日、演出全体の流れから、音楽をかけるタイミングなど、常に細部まで徹底したこだわりを持って仕事に取り組む姿勢を見せてくれた小栗さん。その一秒一秒には常に良い舞台を作り続けたいという強い想いを感じることができた。そこに小栗さんの個性が潜んでいるのだろう。
シチズンの「アテッサ」もまた、”より良い腕時計とは何か?”という想いのもと、スーパーチタニウム™やデュラテクトなどシチズン独自の技術を駆使して、腕時計の可能性に挑み続けているブランドだ。「アテッサ」を手に取った小栗さんの「個性がある」という言葉。それは「アテッサ」のこだわりの技術とそれをまとめる美しいデザインに、自らの仕事との共鳴を感じたのかもしれない。
現在は、2021年に埼玉のみずほ台に竣工する、自身がプロデュースする劇場の企画に追われる小栗さん。
「設計の段階から携わらせて頂いていて、自分の好きなものを詰め込んだ劇場になります。目指すのは、地元の人たちに愛される劇場を作ること。演劇を見たことがない人にも「演劇って面白いな、次も見てみようかな」と楽しい気持ちになって帰ってもらえる…。そんな場所を作りたいです。」
一見華やかに見えるが、地道なことの積み重ねで出来ているエンターテインメントの現場。夢を持って飛び込んでくる若者も多いが、理想とのギャップに挫折してしまう人も多いという。
「これが自分の好きなことだ!と思って飛び込んだその先で、絶望して辞めていく子も多いんです。でも僕は、それでいいと思う。僕自身ですら、本当に好きなことが何なのか、まだ模索している最中かもしれない。好きなことが見つかるまでに、どれだけ遠回りしてもいい。そこで得たものは、必ず自分の財産になるはずですから」
自分が求められる場所で、ベストを尽くし、経験を積み重ねて、高みを目指していく。一秒違うだけで全てが狂ってしまう、厳しいエンターテインメントの世界で、小栗さんは今日も小栗さんにしかできない舞台を作り続けている。
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PROFILE : 小栗了
演出家 1976年東京生まれ。1995年、映画監督を目指し渡米。2001年、役者として活動するために帰国し、蜷川幸雄の舞台やスティーヴン・セガール主演の映画などに出演を果たす。2006年、俳優引退と同時にオペラ制作会社のアートクリエーションに入社。2007年、同社からスピンアウトする形で設立されたイベント制作会社NACの取締役に就任。2007年よりシルク・ドゥ・ソレイユシアター東京の立ち上げに携わり、日本スタッフ代表を閉館まで務める。その後、企業イベントの企画・演出・制作・進行からアクロバットショー・格闘技・演劇・クラシックコンサートの演出などジャンルレスに活動。