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狂言師・野村萬斎が語る
シチズン「アテッサ」
稀代の表現者が見出す、作品づくりへの情熱と
「アテッサ」が共鳴する地点―

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長い時間軸(=人生)と、短い時間軸(=舞台上の表現)。そのどちらにも真摯に向き合う。「いつでも一期一会の精神を大切にしているんです」。

狂言師・野村萬斎さんが出合ったシチズンの「アテッサ」。演者としてはもちろん、演出家や監督などさまざまな役割に挑戦し続ける彼にとって、時計がもつ意味とは。また、時間という概念に対する向き合い方とは。100年以上の歴史を重ねてきたマニュファクチュールであるシチズンの『アテッサ ACT Line(アクトライン)/「CC4055-65E」』を手に、時計と時間、そして表現について語っていただきました。

武士が刀を持つように、腕時計を着ける

着用イメージ
よく通る低い声。ゆったりとした所作。そうした「洗練された大人の男」というパブリックイメージをもつ萬斎さん。身にまとうアイテムもシックなものを選ぶのでは、という予想に反し、プライベートでは華やかな赤いベルトの時計を着けることもあるのだとか。

「私は舞台人なので、稽古や本番中は時計を外しています。だからあまり高価なものは着けません。その日の気分に合わせて選ぶ時計は変えたりします。自分で買うことはあまりなく、いただいたものが多いのですが...持っているのは機能性が高い実用的なモデルや、ベルトの色が少し派手な1本など。そんなラインナップでしょうか」

時計に合わせてファッションを楽しむことも。たとえば赤いベルトの時計を着けるときは、カバンにも同色を選んだりする。そんなふうに手元を起点とし、身なりに統一感を持たせるのが萬斎さん流。一方で、今回着用したアテッサのような落ち着いたテイストの時計も所持しているそうです。

「黒の時計はあまり着けたことがないので新鮮でした。このモデルは見た目が重厚ですが、実際はとても軽い。驚きました。普段はサイズが大きくて重たいものを着けることが多いのですが、これはサイズが大きめなのに軽いのがいいですね」

そうしたスペック的な側面はもちろんのこと、萬斎さんにとって時計は別の意味もあります。すなわち、ただ時間を確認するだけのアイテムではなく、装飾品としての文脈も持ち合わせているのです。
着用イメージ
「時計は、時を知ることができる。そのための道具として存在するのがひとつ。もうひとつは、武士階級の名残を引いている者としては、まるで刀を差すように時計を身に着ける、そういう存在でもあるのではないでしょうか」

室町時代から、武士のたしなみごととして親しまれてきた能・狂言。萬斎さんが時計を刀になぞらえることには、強い説得力があります。

刀は古くから戦うための道具であると同時に、武士としての精神性を象徴する存在でした。そのため彼らは刀のことを単に人や物を切る道具としての機能性だけでなく、見た目の美しさといった芸術性でも選んでいたと言われています。

この日、着用したのは『アテッサ ACT Line(アクトライン)/「CC4055-65E」』。「とにかく軽くて驚きました」と萬斎さんが話すように、シチズン独自の「スーパーチタニウム™️」を素材に採用したことで、堅牢な見た目ながらも軽量性も確保している1本です。まさに武士にとっての刀のように装飾品として心が高揚する魅力も備えつつ、時間を知るための道具としての本来的な機能も搭載しているのです。

商品イメージ

着用商品

エコ・ドライブGPS衛星電波時計

CC4055-65E
¥330,000(税抜価格¥300,000)

遊びも仕事も謳歌する男性のための腕時計

スーツスタイルとカジュアルスタイルの両方で使えるACT Line(アクトライン)。男らしくタフでシャープなデザインが人気です。この『アテッサ ACT Line(アクトライン)/「CC4055-65E」』は、ベゼルからダイヤルに至るまで素材や仕上げの異なる幅広い黒を用い、黒が持つ美しさが際立つ1本。削り出しのアート作品のような力強さを称えたケースに加え、サファイアベゼルを採用したことで、エレガントさがより一層際立つとともに、洗練された力強さが漂います。

シチズン独自の「スーパーチタニウム™️」を採用したケースは耐傷性に優れ、軽くサビにくいうえに、ステンレスの5倍以上の表面硬度を誇ります。「サテライト ウエーブ GPS」を搭載し、上空約2万kmの宇宙空間を周回するGPS衛星から位置・時刻情報を取得し、世界中どこにいても時刻・カレンダーを自動修正。世界を股にかけるジェットセッターにもおすすめのタイムピース。

700年間受け継がれてきた
悠久の時を生きる

着用イメージ
狂言は、庶民の日常や説話を題材に人間の姿を描く喜劇。室町時代にはその様式が確立された、700年以上の歴史を持つ古典芸能です。それだけの長い年月を経た「芸」の最先端にいる萬斎さんは、時間という概念といかに向き合っているのでしょうか。「もちろん誰にでも先祖が存在し、その流れを受け継いでいるのですが、私たちのような世界の人間はそれを俯瞰(ふかん)視しています。だから一般の方よりも、物事を考える時間軸が長いのかもしれません。たとえば自分の一生という数十年ほどの時間軸について考えるよりも、その先にある『地球のこれから』というような長い時間軸について、考えが及びやすかったりするのだと思います」
そうして、洋々と流れる大河のような時を意識して生きる。そんな彼が最も時間を注いでいるのは、やはり連綿と受け継がれてきた芸を次世代に継承することだと言います。

「稽古の日は、人の育成に時間を使うことがほとんど。昼間はずっとお弟子さんに稽古をつけて、自分の稽古は舞台が終わってから。夜中になることもあります」

日々、スキルを向上させるために忙しく過ごす。そうして磨き上げた芸を観客と共有する時間も、刹那的なパフォーマンスとして大切にしています。

「私たちは日雇いのようなもので、1日1公演、毎日違うところで公演しています。だから、移動も多く、忙しい日々を送っています。これがたとえば歌舞伎の場合は「ひと月興行」だから同じ場所で25日間公演をなさるのですが、私たちは違います。東奔西走しています。

さらに歌舞伎と異なるところは、狂言では毎日同じ演目を上演しません。前日は千葉にいたと思ったら、次の日は大阪にいて、それぞれ違う演目を上演しています。 ゆえに一期一会という精神が強い。私たちは室町時代の禅の思想の影響を強く受けているので、それに基づいた一期一会という考え方を大切にしているんです」

命を削り錬磨した芸を披露する時間は、足を運んでくださったお客さまにとって貴重なもの。そこにある偶発性こそが、狂言という相互的なライブパフォーマンスを生み出すのです。

また、舞台上でも時間の使い方について意識している部分があるのだとか。

「物に頼らずに芸で勝負する世界ですから、自分の声と体でどれだけ時間と空間をコントロールできるかが重要。もちろん、私の場合はさまざまな人とコラボレーションしたり、テクノロジーを駆使することもありますが、基本の表現はすべて舞台の上で行います。そのため会場によって残響音や残響時間が異なるので、あるときは早口で喋ってみたり、逆にあるときはゆっくりと喋ってみたり、空間の違いを時間の使い方で調整するんですよ」

室町のころから、脈々と受け継がれてきた長い時間。そうして先人から継承し、自ら研鑽(けんさん)した芸を観客の前で表現するわずかな時間。

その長短どちらの時間とも正面から向き合い、自らを磨き上げることに注力する。表現者・野村萬斎は、誰しも平等に与えられた時間を一瞬たりとも無駄にすることなく生きているのです。

舞台はライブパフォーマンス。
すなわち「生きる」こと

着用イメージ
3歳で初舞台を踏んで以来、58歳になる現在まで第一線で走り続けてきた萬斎さん。今年の年末には人気漫画を原作とする「能 狂言『鬼滅の刃』」の演出・出演も務めるなど、新たな活動へのチャレンジをやめません。その探究心の原動力とは。

「私たちは若い頃から、芸の型をプログラミングされるわけなんですね。それがソフトウエアなのかハードウエアなのかはわかりませんが。還暦を目前にして、ようやくそのプログラミングされた中身の使い方がわかってきたように感じます。

狂言の世界では『40、50は鼻たれ小僧』と言われます。若い頃は、何をするにも意識して力を込めてしまうのですが、年齢とともに体力が衰え、力みもなくなってきます。ちょうどそのバランスが取れてくるのが、40代、50代を終えるころなのでしょう。いろいろなことが無意識にできるようになります。それは何十年もかけてプログラミングされた型が、完全に肉体化されるような感覚かと。

私の父(人間国宝・野村万作)は93歳になりますが、柔道で言うところの「真空」のような境地に達しています。自分は動いていないのに相手を投げ飛ばせる、そんな域に達している。これは決して自分の父だから褒めているわけではなく、実際にそのような芸の域に達している人間と感じるところがあるんです」

小さいころから型を教え込まれ、それを数十年かけてやっと習得する。しかし、その先にあるのは、逆に型からはみ出たオリジナルの世界なのだとか。芸の追求というものは、底知れぬ奥深さがあります。

「先ほどお話したように、私自身もこれから、どんどん体力が衰えていきます。しかし逆にいえば、そのおかげでプログラミングされた型から自然と離れられる。それはデジタルからアナログに移行する、みたいな感覚ですね。でも、ちゃんとそこには美意識がありまして。型は守っているのだけれど、そこからはもう解脱してるというか...。どう表現すればいいのか難しいのですが、今はそんな感覚がしています」
着用イメージ
型から外れることで、芸は究極へと近づく。そのために、萬斎さんは新しい物事に次々と挑戦し続けます。

「私はいかに現代の感覚を取り入れていくかということを意識しています。中世まで人々は、神や仏に生かされているという意識のもと、緩やかに暮らしていました。しかし近代になると、科学技術の発展にともない、その意識の変化のスピードは加速度的に増していきました。だからこそ親子で芸を継承してきた私たちのような芸能も、時代の変化に対応していく必要があると感じています。

うちの父も、祖父から受け継いだ伝統を守りながら、昭和、平成、そして令和と、時代に合わせてさまざまな変化を取り入れてきました。その姿を見てきたので、私も同じようにアップデートしなければな、と。

私は演出や脚本も手がけていますが、そのなかでも常に時代との関わりを意識しています。特にライブパフォーマンスに限っていえば、「ライブとは何か」という問いに対する答えを常に探求していて、それは演者とお客さんがともに「生きている」という感覚、幸福感を共有できる場なのかな、という気がしますね。

笑うことも、音楽に身を委ねることも、涙を流すことも、すべては「生きている」実感につながる。演者と観客がライブでそんな感情を共有できた時、みんなハッピーになるんじゃないでしょうか」

ライブパフォーマンスは、生きること。これまで舞台の上で長い時間を過ごしてきた、萬斎さんならではの哲学がそこにありました。そんな彼がこの先、目指す未来とは?

「やはり、これまで習った型を磨き続けることは重要。表現の鋭さ、幅、大きさ、そして精密さを高めるための稽古は欠かせません。逆にいえば60歳になる頃にそのスキルが身についていなければ、それ以上成長することは難しいでしょう。

しかし、そのスキルを還暦までに身につけることができた人ほど、そこから今度は、スキルと離れた「己の表現」になっていくということなのかなと。 そこからやっと表現なのだろうと思います。

アスリートやバレエダンサーは、10代後半から30代半ばがピークですよね。しかし私たちのような表現者は、彼らとは少し違います。1メーター何十センチ飛べなきゃダメ、みたいな超絶技巧を競うのではなく、舞台上で人間の心理を表現し、お客さまが共感してくださることが重要。そのためには、幅広い世代の観客と共感できるだけの多様な経験が必要となります。

そして、この芸を未来へつなぐという意味で、後継者の育成も私の重要な役割。息子をはじめ、お弟子さんたちに自分の表現のDNAを受け継いでもらうことで、伝統を未来へつないでいければいいですね」

Profile

野村萬斎

1966年、東京都出身。東京芸術大学音楽学部卒業。 重要無形文化財総合指定者。狂言師野村万作の長男として幼少期から祖父や父に師事し、3歳で初舞台を踏む。国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、舞台『敦-山月記・名人伝-』『マクベス』『子午線の祀り』「能 狂言『鬼滅の刃』」『ハムレット』をはじめ、古典の技法を駆使した作品の演出など幅広く活躍。また、映像分野での活躍も目覚ましく、近年の出演作には、映画「七つの会議」「リボルバー・リリー」「もしも徳川家康が総理大臣になったら」、ドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子」「どうする家康」「アンチヒーロー」などがある。現在の日本の文化芸術を牽引するトップランナーのひとり。2021年4月より石川県立音楽堂アーティスティック・クリエイティブ・ディレクターを務めている。

Model / Mansai Nomura
Photo / Makoto Nakagawa(magNese)
Styling / Kan Nakagawara(CaNN)
Hair & Make-up / Shinji Okuyama
Text / Kotaro Tsuji
Edit / Ryutaro Hayashi(Esquire)

商品イメージ

着用商品

エコ・ドライブGPS衛星電波時計

CC4055-65E
¥330,000(税抜価格¥300,000)