Series 8 その果てしなき挑戦
モダン・スポーティデザインの機械式時計として2021年に登場したシリーズエイト(Series 8)が、
GMT機能を搭載した最新作の登場で新たなフェーズへと突入。
そこでHODINKEE Japan(ホディンキージャパン)編集長の関口 優(以下、関口)が、
商品企画を担当したシチズンの伊藤惠己氏(以下、伊藤氏)に話を伺った。
東京発信のモダンスタイルウオッチというコンセプトを継承しつつ、機械式という新たな価値観を擁した
シリーズエイト。そこで目指したこと、デザインにおける新たな試みと試行錯誤、
そして最新機種でのGMTの導入理由やさらにアップデートするコレクションの魅力について、両者が語り合う。
シリーズエイトは、これまでクォーツやエコ・ドライブのイメージが強かったシチズンにおいて、かつて懐中時計から始まったブランドとしての機械式の再認識である。そしてそれは、2014年に休止した同名モデルとの明確な違いでもある。
関口:「厳密には先代の復刻ではないということですか」
伊藤氏:「身につけるユーザーのスタイルに合い、(それを)際立たせるという視点から作りました」
そのなかで引き継いだのはモダンというコンセプト。これにスポーティというキーワードを加え、デザインに落とし込んだ。そして日常使いに応える現代的な実用機能として、精度の重視と耐久性、高耐磁性を追求した。それは既成概念や格式に縛られず、ボーダーレスに、自由に生きるライフスタイルにふさわしい。
<細部の試行錯誤から紡がれるクリエイション>
シリーズエイトを特徴づけている代表的なディテールのひとつが、870メカニカルにおいてデザインアクセントにもなっている2体構造のベゼルだ。それは、切削や加工の技術を駆使した凝った作り込みというシチズンの強みを前面に打ち出している。そのうえで、機械式時計であるシリーズエイトらしさについて試行錯誤を繰り返し、エッジの立ったデザインに合わせ、それまであまり前例のなかった荒いヘアラインを採用した。メーカーとして実績を積んできたチタンをあえて使わなかったのにも、理由がある。
伊藤氏:「やはり、機械式ならではの重厚さを伝えるためにはステンレスがいいと思いました」
関口:「ある程度の重量感は欲しいですし、それが高級感にもつながるという声もありますね」
また、シリーズエイトに搭載されているムーブメントはどれも、薄型設計の90系がベースだ。ケース厚を抑えつつ重心位置も下げられるので、腕馴染みにも優れる。同ブランドのプロダクトには、作り込み、素材、ムーブメントの調和が見られる。
<切り立ったエッジが生み出す美観>
既存の3機種に新たにGMTモデルを加え、ますます充実するコレクションには、シャープネスのデザイン思想が貫かれている。ブレスレットをはじめとして、エッジを際立たせたデザインを鏡面仕上げによる輝きで演出し、ケースからブレスレットへと流れる光の動きを意識した。
新作880メカニカルではシリーズの統一感を出すため、これまでに見られた2機種のシンボリックなデザインを融合。そのうえでGMT機能の付加による厚みを逆手に取り、2体構造の立体的なケースを採用した。
関口:「今回なぜGMTを採用したのですか」
伊藤氏:「シリーズエイトはそもそもグローバルモデルであり、それをメッセージとして伝える機能としてGMTがふさわしかったのです」
さらに文字板には、“東京”をキーワードとして、ビル群の大きさの異なる四角い窓のイメージと、繁栄の意味を持ち日本で親しまれてきた市松模様を組み合わせた独自のパターンを施している。
<Series 8が目指す未来>
関口:「シリーズエイトの、今後の展望についてお聞かせください」
伊藤氏:「グローバルもさることながら、機械式時計としてのステップアップをどう実現するかが大きなテーマですね」
シチズンが時計の基本ともいえる機械式を作り続けているという姿勢。それもハイエンドではなく、現代の日常生活に寄り添った機能とスタイルを兼ね備えたシリーズエイトを通して、広く伝えていくという決意である。
伊藤氏:「ぜひそのようなブランドとして、育てていきたいと思います」