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この「機械式時計とのつきあいかた」と「より良い精度を保つには」では、機械式時計の魅力や機械式時計の精度を保つ心臓部についての紹介、動かし続けるためのこつや、精度を保つために心がけるとよいことなど、機械式時計を快適にお使いいただくための知識をご覧いただけます。
機械式時計とのつきあいかた
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機械式時計を使うのには、特別なおもむきがあります。現代では時刻を知るための方法はいくつもありますが、その中でもさまざまに人の手をかけることができるものだからかもしれません。
機械式時計は、日常だれもが手に取れるものとしては人類最高の精密さで作り上げられた製品の一つです。17世紀ヨーロッパに端を発する近代科学技術の発展とともに進歩してきた、機械技術の象徴ともいえるでしょう。その内部の洗練された機構は、機械の持つ機能美の極点の一つを示します。それでいてその動力はぜんまい、人の手で巻いて初めて動きます。ぜんまいを巻き忘れたら止まってしまいますし、うっかりしていたらずいぶん時刻がずれてしまうかもしれません。機械式時計が刻む時には、使う人それぞれの生活に触れる気配があります。
どんなときに、どんなところで、どのようにあつかうか。機械式時計の刻む時は、使う人の生活を映して微妙に彩りを変えます。機械式時計を使うということは、あるいは、時間に手触りを取り戻す試みのひとつといえるかもしれません。
多くのものが電気で動くこの世の中で、機械式の腕時計に自らの手で毎日動力を与え、時刻を合わせ、手をかけながらともに時を過ごしていくのには、ほかにはない楽しみがあります。ていねいに日々お使いいただくことで、シチズンの機械式腕時計は、日常のパートナーとして十分な精度で時を刻み、生活のリズムを作る一助となることでしょう。
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機械式時計の動力は、ぜんまいがほどける力です。身近なもので、ほかにぜんまいがほどける力を動力としているものは、ぜんまい式のオルゴールやぜんまいで車輪を回す車のおもちゃなどが挙げられます。
例えば、ぜんまい式のオルゴールでは、ねじを回すとぜんまいが巻き上がり、そのぜんまいがほどけていくにつれてオルゴール内部の円柱(シリンダー)が回ります。その回転するシリンダー上に配置されたピンが発音板をはじいて音を出すわけです。
同じように機械式時計では、りゅうずを回すことによって時計内部のぜんまいが巻き上がり、そのぜんまいがほどける力で歯車が回ります。回転する歯車は時計の針を動かして時刻を表示します。
オルゴールでも時計でも、大本の力は使う人がぜんまいを巻き上げる力です。機械式時計は、使う人が定期的にぜんまいを巻き上げてはじめてずっと動き続けることができるのです。
使う人が指でりゅうずを回すと、ぜんまいが直接巻き上げられます。時計をつけた腕が振られると、時計内部の回転錘(おもり)が回転して、ぜんまいが自動的に巻き上げられます。機械式時計のぜんまいは徐々にほどけていくのですが、巻き直さなければ2、3日でほどけてしまいます。
また、機械式時計がもっとも安定した精度で動作するのは、ぜんまいが十分に巻き上げられた状態のときです。
できれば毎日身につけていただき、りゅうずを回してぜんまいを巻いていただくのが理想的です。
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時を刻むのを正確にしようとすればするほど、より高度な技術と洗練された機構が必要になっていきます。それゆえに、機械式時計は、日常だれもが手に取れるものとしては人類史上最高の精密さで作られた製品の一つといえるまでに発展しました。
そのように精密に作られている機械式時計ですが、日におおよそどのくらいずれるか(日差)は、2~3日といった短い期間で見ると、製品仕様などに目安として書かれているよりも大きくなる場合もあります。また、使用状況や個体差によって、ずれの傾向もさまざまです。こういったところはちょっと生き物に似ていて、動き方の癖をだんだんに飲み込んでいくというのも、機械式時計を使う楽しみの一つかもしれません。
一週間から十日といったある程度の期間様子を見て精度の傾向を見た上で、少なくとも数日に一度は時刻を合わせるようにすると、普段使うのに十分な精度で時を刻み続けます。
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アナログのクオーツ式腕時計が電池で動くモーターを動力として歯車を駆動しているのに対して、機械式腕時計は、ぜんまいを動力として歯車を駆動しています。
また、振り子時計の振り子にあたる、時計の精度を司る部分ですが、クオーツ式時計は、電圧をかけた水晶の薄片が振動する性質を利用しているのに対して、機械式時計は、てんぷという部品が左右に回転する周期に基づいて時を刻んでいます。裏蓋がシースルーになっている機械式時計では、てんぷが規則正しく動き続ける様子を見ることができます。クオーツ式腕時計 機械式腕時計 動力 電池 ぜんまい 精度 電圧をかけた水晶振動子の振動に基づく
(一般的に32,768 Hz)てんぷの回転運動に基づく
(5~10ビート/秒(2.5~5 Hz))誤差の単位 一月単位(月差) 一日単位(日差)
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お使いの機械式時計のおよその精度を確認したいときは、1週間から10日ほどの間、毎日1回できるだけ同じ頃に時刻合わせとぜんまいの巻き上げを行い、時刻を合わせるときに前日からの時刻のずれを記録してください。
期間中の日差の平均が、お使いの時計の精度です。
機械式時計の精度は一般的に一日あたりの誤差(日差)で表しますが、1日から数日程度の短期間で見た場合、機械自体に問題がなくとも、製品仕様などに書かれた日差を越えてずれることもあります。また、個体によりずれかたに差があることもあります。
機械式時計の精度は、ぜんまいの巻き上げ量や周囲の温度、時計の姿勢(時計に対して重力の働く方向)などに影響を受けますので、あまり極端な環境下で身につけないことや、身につけていないときの時計の置きかたを一定にするなどのことで、使用条件を一定に近づけると、日ごとの精度は安定するでしょう。
特に極端な環境下で使用していないのに、上記の方法で確認した精度が仕様上の精度より大幅にずれている場合は、点検や調整が必要かもしれません。お買い上げ店や弊社お問い合わせ窓口にご相談ください。
より良い精度を保つには
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機械式時計はぜんまいを動力として動いていますが、ぜんまいがほどけていくにつれて、歯車を回す力は少しずつ弱くなっていきます。ぜんまいがほどけきるまで、2日から3日は動き続けますが、機械式時計が最も安定した精度で動作するのは、ぜんまいが十分に巻き上げられた状態のときです。
よりよい精度を保つためには、毎日りゅうずでぜんまいを巻き上げることをおすすめします。
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機械式時計の精度を司るのが、てんぷです。振り子時計の振り子の役目をしている部分です。
てんぷの動きは重力に影響されます。例えば時計を身につけているときには、腕の動きにつれて時計の姿勢はさまざまに変化しますが、時計の姿勢が変わると時計に働く重力の方向が変わって、てんぷの動きがばらつきます。てんぷの動きがばらつくと、時計の精度に影響が生じます。
また、機械式時計には個体差があるため、身につけていないときでも、その置き方によって精度に差が生じる場合があります。
身につけていないときは、一定の同じ置き方をしておくのがよいでしょう。
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機械式時計の精度をつかさどるてんぷは、金属でできていますので、温度が変化すると、わずかに膨張したり収縮したりします。その膨張や収縮によりてんぷの運動の周期は変動します。また、てんぷを往復させているひげぜんまいの、ばねとしての性質も温度によってわずかに変化します。これらの影響により、時計が進んだり遅れたりします。
あまりに暑かったりあまりに寒かったりといった極端な条件下で身につけたり保管したりしないことをおすすめします。
*本時計は+8℃〜+38℃の温度範囲でお使いいただくのをおすすめしております。
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機械式時計は、精度を司るてんぷを筆頭に多くの金属製の部品を使用しているため、磁力の影響を受け、精度に差が生じます。
スマートフォン、タブレットやタブレットカバー、イヤホン、その他ポータブルデバイスのスピーカ部、強い磁気を発する健康器具、冷蔵庫のマグネットドア、バッグの留め具など、強い磁気が発生する物に近づけないでください。バッグの中に入れる際には特にご注意ください。時計に近づけないよう注意する機器の例
いずれの機器も、時計から少なくとも5 cm以上離しておくようにしてください。
磁気の影響について、より詳しくは、「時計の知識」の「磁気はなぜ問題なのか」をご覧ください。
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機械式時計の精度はてんぷの回転に基づいています。強い衝撃や連続した衝撃は、てんぷの運動に強い影響を与えますので、機械式時計の精度を大きく損ないます。衝撃があまりに大きいと、てんぷが変形したり、破損してしまう場合もあります。
落としたり、身につけたままゴルフやテニスのような、手首に強い衝撃が及ぶスポーツをしたりしないようにご注意ください。
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長くお使いいただくうちに、時計内部の部品は徐々に摩耗し、劣化いたします。また、各部の潤滑油も次第に汚れ、劣化いたします。
部品の点検・交換や注油のために、定期的に(2、3年に一度を目安に)点検をご依頼いただき、分解掃除をしてくださいますようおすすめします。
お買い上げ店や弊社お問い合わせ窓口にご相談ください。
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自動巻き機能について