SPECIAL

RYUSUKE HAMAGUCHI

MOVIE DIRECTOR

どんな困難に直面しても、
映画を撮る楽しさが失われることはない。

2018年の商業映画デビュー作『寝ても覚めても』のカンヌ国際映画祭コンペティション部⾨出品に続き、2021年7⽉、村上春樹による珠⽟の短編⼩説を映像化した最新作『ドライブ・マイ・カー』が、第74回を数えた同映画祭で⽇本映画としては史上初の脚本賞を受賞した映画監督の濱⼝⻯介さん。
2021年3月にも、世界三大映画祭の一つ、第71回ベルリン国際映画祭にて、監督・脚本を手がけた作品『偶然と想像』が、グランプリに次ぐ銀熊賞(審査員大賞)を受賞する快挙を達成。国内外で高い評価を集める、いま、最も注目すべき映画監督である。そんな濱口さんには、映画を製作する中で、「時間」に関してある感覚を味わうことがあるという。

「子供の頃から映画館で映画を観ることが好きだったんですが、映画って面白いんだなと感じたきっかけが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。10年ぐらい経ってから、この作品が抜群に良くできた映画だったことに気付いたんですが(笑)。観て以来、どんどん映画にのめり込んでいきました。そのうちに自分でも作ってみたいと思うようになり、大学では映画製作サークルに入りました。自分で映画を作る面白さを知ってからは、ごく自然に映画監督への道を歩み始めたと思います。映画を作る中では、辛いなとか大変だなと思うことはたくさんあります。ただ、映画を撮る楽しさ、その気持ちは失われていない。とてもありがたいことだなと思います」

最新作『ドライブ・マイ・カー』は、2013年に原作を雑誌で読んだ時から心惹かれるものがあり、運命的な出会いだと感じ映画化を熱望していたという。
「一番大きな要素はキャラクターの魅力だと思います。西島秀俊さん演じる“家福”は妻を失い、心に大きなキズを負っているけれど、その悲しみや苦しさを表には出さずに淡々と暮らしている。一方、家福のドライバーとして登場する三浦透子さん演じる“みさき”も辛い過去を背負って生きているけれど、その事実を語ろうとしない。それが、クルマという空間で一緒に過ごしていくうちに、だんだんとお互いを明らかにしていく。現実の世界でもクルマで共に移動していくうちに、普段は話さないようなことを口にすることもあると思うんです。そのリアリティとキャラクターの魅力を映画の中で描いてみたかったんです」

東日本大震災の被災者へのインタビューで構成されたドキュメンタリー作品からフィクション作品まで、濱口さんが撮る映画のジャンルは決して単一ではない。しかし、ジャンルは違えどもスクリーンを通して観客に伝えたいことは変わらないという。
「映っている人を魅力的に捉えたい。その人の魅力そのものを捉えたいという気持ちはドキュメンタリーであれフィクションであれ、同じように持っています。ドキュメンタリーの場合は、その人が暮らしてきた背景、その人自身のままカメラの前に立っていただくので、それを魅力的に撮ることは一つの義務、その人の人生に対して敬意をはらうということだと思っています。フィクションの場合でも、俳優を格好良く撮るとかきれいに撮るということではなく、その俳優の魅力を捉えたいんです。今回の作品であれば、家福という人物の魅力は西島秀俊さんの魅力でもあると感じられるように撮ることを心がけました」

自身で脚本を書き、監督も務める濱口さん。同じ作品に携わっていても、脚本の執筆と撮影現場での作業は大きく異なる。だが、「時間」に関して同じ感覚を味わうことがあるという。
「脚本を書いている時でも撮影の現場でも、今という時間の中に入って行く、意識から時間が消えるような感覚になることがあるんです。それは撮影において、より顕著なんですが。二度と繰り返すことのできない価値ある場面を前にした瞬間、繰り返しの日常とは違う領域に意識が入って行く感覚。その状態から覚めて時計を見ると『こんなに時間が経っていたのか』と気付く。脚本の執筆でも撮影においても、究極的には目指しているものは同じという気がします」

腕時計はデジタルではなくアナログ派。シンプルなデザインが好みで、あまり多くの機能は求めない。自分の体の一部のように、その存在を忘れさせてくれるような腕時計が理想だと濱口さんは言う。
「見た目の印象と違って、すごく軽いですね。着けていても気にならないですし、どんな服装にも合いそうな気がします」
アテッサを手にした瞬間、『スーパーチタニウム™』ならではの軽さに驚く濱口さん。スーツスタイル、カジュアルどちらのシーンにも映えるスタイリッシュなデザインは、プライベート使いはもちろんのこと、海外の映画祭でタキシード姿でステージに立つ際にも違和感はないだろう。
「海外へ行く際は自分で時間を管理しなければいけないので、腕時計は必需品なんです。今はスマホでも時間を調べられますけど、腕時計なら失くしたり盗まれたりするケースは少ないですよね。安心できる要素として腕時計を着けて行きます(笑)」
海外映画祭へ招待されることも多い濱口さんは、2ステップの簡単な操作で海外の現地時刻に合わせられる機能『ダイレクトフライト』に興味津々。りゅうずを一段引いて回すだけの簡単な調整に感心しながら、何度も操作にトライしていた。

映画監督になってから、あえて撮影現場では腕時計を着けないようになったという。その理由は、現場を指揮する立場にある濱口さんの気遣いからである。
「基本的には時間を気にしないに越したことはないので(笑)。撮影現場ではスケジュールや時間を管理してくれるスタッフがいますので、自分は目の前のことに集中できる安心感があります。撮影中に自分が腕時計を見てしまうと俳優やスタッフに『時間を気にして良し悪しを判断しているのかな?』という印象を与えてしまう気もしていて。意識的に遠ざけている部分はありますね」

2018年、『寝ても覚めても』で商業映画デビューを飾って以降、多くの作品に携わり、多忙な日々を極める濱口さん。オンとオフを、どう切り替えているのか興味深い。
「お恥ずかしいのですが、休みの日は『映画でも観に行こうか』となってしまうことが多いんです(笑)。映画を観ている時は、それこそ時間の感覚が伸び縮みして変わっていく感じがしますね。ただ、どうしても職業柄、参考になりそうな部分に目が行ってしまったり…。そういう目線で映画を観てしまうところはあります。ただ、それがストレスになることはありません。自分は、仕事をしている時が一番楽しいので」

2020年に共同脚本を担当した、黒沢清監督作品『スパイの妻〈劇場版〉』がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝き、2021年3月には自身が監督・脚本を手がけた『偶然と想像』がベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。さらには『ドライブ・マイ・カー』も第74回カンヌ国際映画祭で⽇本映画では初となる脚本賞を受賞するなど、海外から高い評価を受けている現状を自分ではどう捉えているのか。
「ありがたいことですよね。自分で言うのもなんですが、そんなにメジャーな映画を作っているわけでもないので(笑)。でも、日本以外の場所で作品を観てくださる方がいることは、すごく支えになっています。励みというよりは、心の支えになっていると感じています」
“心の支え”。そう言い直した濱口さんの言葉から、順風満帆な映画人生を歩んできたわけではないことが感じられた。「わがままを許してもらっています(笑)」と飄々と語るが、その裏には様々な苦難があり、それを乗り越えて作品を生み出し続けていることは想像に難くない。そんな、映画に対するひたむきな想いと行動で人生を切り開いてきた濱口さんの姿に、アテッサ「ACT Line」の力強さと軽快さを併せ持ったデザインが重なる。

国際的な映画祭での受賞をきっかけに、海外の作品で監督を務めた先人たちがいる。濱口さんが、その一人になる可能性は高いだろう。
「今は、海外で映画を撮りたい思いもありますし、それが現実となったらとてもありがたいことですが、映画監督を目指していた頃は、そんなことを考えてもいませんでした。実際に海外へ行くようになったり、アメリカのボストンで1年間暮らした経験などから、そこで生活する人たちは自分たち日本人と言語や文化は違うけれども通じ合える、価値観を同じくする人たちがいると感じられるようになったんです。それを実感したことで、海外でも映画を撮れるかもしれないと思えるようになりました」
多様性社会の中で生活した経験が濱口さんの視野を広げ、海外からの高い評価が背中を押す。明日に向けて、新たな時が動き出しているのかもしれない。

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洗練された佇まいと上質なブラックボディが、ビジネスでもカジュアルでも映えるアテッサ「ACT Line」の3針モデル。シンプルな操作で世界26都市の時刻とカレンダーを表示する『ダイレクトフライト』機能を搭載し、グローバルなシーンでも活躍。シチズン独自の表面硬化処理『デュラテクト』により、過酷な環境でも美しく輝き続ける。

PROFILE : 濱口竜介

映画監督・脚本家 1978年神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業後、映画の助監督などを経て、東京藝術大学大学院映像研究科に入学。2008年の修了作品『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同制作『THE DEPTHS』や、東日本大震災の被災者へのインタビューからなる『なみのおと』、『なみのこえ』などを監督。2015年、演技未経験の女性4人を主演に起用した『ハッピーアワー』が、各国の映画祭で主要賞を受賞。2020年、脚本を手がけた『スパイの妻〈劇場版〉』がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。2021年、監督・脚本を担当した短編集『偶然と想像』がベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員大賞)受賞という快挙を達成。最新作は、第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』(8月20日(金)全国ロードショー)。

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