INTERVIEWS - VOL.05

強度と美しさを両立した驚異の表面硬化技術「デュラテクト」

純チタニウムの弱点を補い、理想の素材に変えるための独自技術とは?
軽く美しく、耐メタルアレルギー性に優れ、しかも驚きの硬さと強さを持つことから、アテッサシリーズすべてのモデルに採用されている「スーパーチタニウム™」。その鍵となるテクノロジーが、表面に施されたシチズン独自の表面硬化技術「デュラテクト」だ。この技術はどのように誕生し、どんな性能をもたらしたのか。開発を一貫して担当してきた、製品統括本部 技術開発部の軽石賢哉(かるいし けんや)に聞いた。

―純チタニウムの弱点を完全に克服した「デュラテクト」

1970年、世界で初めて純チタニウムをケースに使った時計を発売して以来、耐メタルアレルギー性に秀でた「人に優しい」純チタニウムによる時計外装づくりを追求してきたシチズン。他の時計メーカーの多くは、チタニウムに他の金属を混ぜたチタニウム合金を採用する中、シチズンは純チタニウムにこだわった。なぜなら、合金にすることで加工は簡単にはなるが、純チタニウムが持つ優れた耐メタルアレルギー性が失われてしまうからだ。

同じ大きさなら、ステンレスよりおよそ4割も軽いというアドバンテージも、時計の素材として理想的であった。だがこの素材には、加工が難しいことに加えてもうひとつ、ケース、ブレスレットなど時計の外装に使うには致命的な問題があった。ステンレススティールよりも軟らかく、傷が付きやすいという問題だ。

では、弱点である弱さをどう補うか ―― 問題を解決するために、シチズンのエンジニアたちが長年かけて開発したのが、「デュラテクト」と名付けられた純チタニウムの表面を硬く強くする独自の加工技術であった。表面処理のエキスパートである軽石は、当初から一貫してこの加工技術の開発に携わってきた。

純チタニウムの外装は、「デュラテクト」加工を施すことでステンレスのビッカース硬度200Hvの約5倍以上、1000Hvを超える表面硬度を得る。軽くて人に優しく、傷が付きにくいという、腕時計にとって理想の素材「スーパーチタニウム™」となるのだ。

「この技術の開発のきっかけ、ヒントになったのは、時計外装の表面を金で装飾する研究でした。イオンプレーティングという技術で、外装部品の表面に金の被膜をつくるのですが、金は柔らかい金属なので、そのままでは磨耗してしまう。金の下に硬い被膜を付けることで、長持ちさせることができるのではと考えたのです。つまり、軟らかい貴金属の輝きをそのままに、下地の硬化層で支える。貴金属を使用せずにこの硬化層で金を表現できたからこそ、磨耗に強い2層構造のメッキになったのです。」

当初は金色の窒化チタン被膜(TiN)を外装部品の表面につくる取り組みから始まった。その技術は進化を遂げ、磨耗の懸念が少ないシルバー色やピンクゴールド色も出せるようになった。

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「『デュラテクト』が実現するビッカース硬度1000Hvがどれくらいの硬さかというと、もはや研磨ができないレベルと言えます」

―用途や目的に応じた8種類の「デュラテクト」

現在、軽石たちが開発した「デュラテクト」には、技術的には3つのグループ、具体的な加工としては8つの、技術や特長のそれぞれ異なる種類がある。

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表面硬化技術(デュラテクト)の種類

ひとつはイオン化した金属やプラズマ化したガスで、素材をコーディングする技術を用いたもの。シルバーやピンクゴールドなどの美しいカラーも実現されている。チタニウムカラーの「デュラテクトTIC」、ステンレススティールと見分けがつかないシルバーの「デュラテクトPTIC」、ゴールドの「デュラテクトGold」、「デュラテクトα(アルファ)」、ブラックの「デュラテクトDLC」がこれに当たる。

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IP(イオンプレーティング)技術のイメージ(断面図)

もう一つが空炉に特殊なガスを封入し、熱処理を施すことで、叩いても傷が付きにくい丈夫な硬化層を形成させるガス硬化技術を使ったものもある。これが「デュラテクトMRK」だ。

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ガス硬化技術のイメージ(断面図)

さらに複数の表面加工技術を組み合わせることで、それぞれの技術の特長を兼ね備えた、さらに機能に優れた機能を実現する。「デュラテクトDLC/MRK」や「デュラテクトα/MRK」である。その強さ、美しさは驚異的だ。

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複合硬化技術のイメージ(断面図)

前にも述べたが、「デュラテクト」加工を施した外装部品の表面のビッカース硬度は最低でも1000Hv。より硬いものだと2000Hvを超える。そうなると、もう真鍮ブラシでこすっても傷が付かない。

「『デュラテクト』加工を施した純チタニウムの板を、ドラムスティックで叩く実験を行ったり、あるいはその上でタップダンサーに踊ってもらったりと、『デュラテクト』の実力を証明するために、これまでさまざまなデモンストレーションを行ってきました。もっと多くの方に、そのすごさを知って欲しいですね」

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―他社には絶対に真似ができない「デュラテクト」

純チタニウムの表面につくられたミクロン単位のごく薄い被膜なのに、驚異的な硬さと強さを持つ「デュラテクト」。だがその強さゆえに、いったん施してしまったら、その後の加工はできない。

「ですから、デュラテクト加工の前には、外装部品の形や表面の仕上げをすべて完璧にしておく必要があります。やり直しはできないのです」

純チタニウムのハイクオリティ加工技術と、「デュラテクト」という表面硬化技術。アテッサの硬く強く美しいスーパーチタニウム™外装は、シチズン独自の2つの技術があって、初めて実現できるものなのだ。

ところで、ここまで優れた技術なら、他社も「デュラテクト」を採用したいはず。しかし、それは難しいだろうと軽石は語る。

「それは、デュラテクト加工を行う装置がすべて内製、つまり私たちが社内で専用開発したものだからです。市販されている表面処理を行う装置では、ひとつの面にしか表面処理が行えません。しかし、私たちは独自に3次元で表面処理が行える装置を開発して使っています」

他社の時計でも、外装部品に表面硬化処理を施したものはある。しかし部品を細かく見てみると、処理が施されているのはひとつの面だけ。そこがシチズンとの違いだ。この点において特に軽石が誇りに思っているのが、「アテッサ エコ・ドライブGPS衛星電波時計F950」のブラックチタン™シリーズの最新・最高峰モデル「CC4004-58E」だ。

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「このモデルでは、ブレスレットのコマのひとつひとつ、そのすべての面に『デュラテクトDLC/MRK』加工が施されています」

―さらなる進化に向かう「デュラテクト」

硬さと強さと美しさを極めた、シチズンの「デュラテクト」。もはや完成されたように思えるが、この表面硬化技術には、まだまだ夢がある、未来があると軽石は語る。

「ビッカース硬度は、技術的にはもっと上げることも可能なのですが、そうすると今度は脆くなり、被膜の表面が割れてしまうという問題が起きてしまう。硬度は、いま以上に上げる必要はないと私たちは考えています」

代わりに、軽石をリーダーとする開発陣が目下目指しているのは、「デュラテクト」による新しい外装色の実現だ。

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シチズン独自の表面硬化技術(デュラテクト)によって実現した、鮮やかなチタンケースの色調

「私たちはピンクゴールド色の『デュラテクト』の開発を担当し、レディスウオッチでこの技術が活用されているのを嬉しく思っています。そして『デュラテクト』には、さらに多彩な色を実現できる可能性がある。実は私たちはいま、その開発に取り組んでいます。『硬くて強い』のはもちろんのこと、美しさでも進化していきます。どうぞ、ご期待ください」

INFORMATION
製品統括本部 技術開発部 軽石賢哉

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