INTERVIEWS - VOL.03

理想のデザインを実現する外装のスペシャリストが語る想い

「エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」はいかにして誕生したのか?
「エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」の外装設計を担当、さらに量産仕様の最終デザインをまとめたのが、製品開発部 第一製品開発課の冨山 泰史(とみやま やすし)だ。
自身でも「購入したい」と思うに至るまで、納得の製品デザインに辿り着いたと語る冨山。その過程にはさまざまな紆余曲折があったという。果たしてどのような経緯があったのか。シチズン本社で、我々に秘話を明かしてくれた。

―ビジネスウオッチから、週末も使える「ビジネス&カジュアル」ウオッチへ

1987年の第1号モデル誕生以来、現在までの31年間、チタニウムのみをケース素材に用い、技術面でもデザイン面でもシチズンの先進性を体現してきた「アテッサ」。その最新モデルが、「エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」だ。

alt

エンジニアの冨山は、このモデルの外装設計担当者。大学の理工学部精密機械工学科を卒業して入社、現職に就いて約10年になるという。しかし、外装設計といってもシチズンの場合、その職分は広い。文字板、ケース、ブレスレットなどの外装デザインを、デザイナーの希望を最大限採り入れながら、製品として実現できる最終仕様にまで落とし込み、まとめていくことも含まれる。

「当初は文字板をメインに担当していましたが、今では外装全般を担当しています。デザインによっては物理的に製造が困難だったり、製品化するにはコストがかかり過ぎたりする場合もあります。その場合の対応策を検討・調整するのも、私の役割です。コスト面や製造技術面も加味しながら、デザイナーのこだわりや企画のコンセプトをできるだけ活かすように調整し、落としどころを探るのも私の仕事。特に見た目に大きな印象を与える外装設計とデザインは、切っても切れない、分かちがたいものだと思います」

光発電式衛星電波時計の外装設計を担当するのは、2015年発売の「アテッサF150」に続いてのこと。今回のモデルの開発では、冨山はデザイン画もないまったくのゼロの状態から商品企画に参加したという。商品企画やデザイナーらと自由闊達な議論を交わした結果、まとまったコンセプトは、「アテッサのこれまでのスタイルを良い意味で崩す」ことだった。

alt

「2011年に世界で初めて製品化された、ムーブメントにボリュームのある光発電式衛星電波時計『エコ・ドライブ サテライト ウエーブ』では、 “光発電式衛星電波時計であること”を前面に打ち出したモデルで、風防を球形にするなど、その厚さを強調するようなボリューム感と存在感のある、異彩を放ったデザインにまとめていました。しかしGPS衛星電波時計の開発が進み、アテッサへ導入されると、製品コンセプトは“ビジネスマンがスーツ姿で普段使いする腕時計”となり、ケースの角を斜面にしたり風防をあえてフラットにしたりするなど、視覚効果で“薄く見せる”こと、『あ、薄いな』と思わせるデザインを追求してきました」

しかし今回はそんなステレオタイプな「ビジネスウオッチ」ではなく、ビジネスはメインだが、カジュアルでもプライベートでも使えるものにしよう、アテッサのスタイルを良い意味で崩そう、という話になったという。

alt

「ビジネスマンのスタイルが、昔とは明らかに変わってきた。スーツ姿でリュックを背負い、スニーカーを履いて自転車に乗る。そんな姿も見かけるようになりました。ビジネスのスタイルが変わり、カジュアルになってきた中で、従来のフォーマル路線に沿ったままのデザインはどうか、という話になりました。ビジネスシーンを意識しすぎないことでカジュアル服にも合うようになり、プライベートでも自然体で使ってもらえるようになるのでは、という結論になったのです」

―当初は、2012年の「アテッサ」を参考に

そこで“参考作品”として浮上したのが、歴代の「アテッサ」の中でも名作と言われる、2012年にATTESA 25周年のタイミングで発売されたモデルであった。光発電で電波受信機能を備えたキャリバーH610を搭載する「エコ・ドライブ 電波時計」であり、同年、「各部位を構成するエレメントとそのバランス、重量、動きのしなやかさなど完成度が非常に高い」という評価からグッドデザイン賞を受賞している。

  • alt
  • alt

「社内的にも『アテッサらしい』『カッコイイ』と評価の高いモデル。文字板の設計を私が担当したこともあり、個人的にも思い入れが強く、自分でも購入して大切にしているモデルです。文字板の中に小さな部品を、考えられる限り惜しみなくふんだんに使いました」

このモデルは、暗闇に注がれる一筋の“光”をイメージしてデザインされたもの。文字板の2時・6時・10時位置に金属の別体リングを配置したり、サファイアクリスタルの風防の上にシチズンのロゴを載せたりと、奥行き感、重厚感、シャープ感を演出したモデルだった。

「価格設定も高めのモデルになると決まっていましたし、これを参考にして自由な発想でいろいろ盛り込もう、装飾の小部品も文字板にいろいろ付けようと考えていました」

―予定は一転、デザインは真逆の方向に

ところが、実際のデザインは違う方向に進むことになる。デザイナーの井山(本コンテンツvol.2に登場)が、「ビジネスとカジュアル、どちらでも魅力的なデザインということであれば、良い意味でシンプルにしたい。『引き算の美学』で行きたい」と主張したのだ。これは、冨山の考えとはまったく真逆の方向だった。

「フルオプションではなく、シンプルにして高品質、カッコ良さを追求しよう。シンプルにしてその分、より見た目の風合いや質感で攻めていこう。時計である以上、当たり前に在る部分にこだわり、ブラッシュアップしていこう、と言われました。一個一個のパーツ、つまり点を盛っていくのではなく、面の質を上げよう、と」
そして実際に、デザイナーから提示された図面を見たとき、「これで大丈夫かな?」と、冨山は期待と同時に不安に駆られたという。

「あれ、この部品も付けないの? といった印象で。これまでのアテッサのイメージに対して要素が抑えられすぎていて、不思議な感じがしました。そこで最終デザインの決定時には、あくまで当初のコンセプトを守りつつ、デザインポイントとして、最小限のものを加えてもらうように提案してみました。そのひとつが、6時位置のインダイヤル(デュアルタイムのダイヤル)にさりげなく加えた、金属リングです」

alt

これは凹凸と仕上げだけで表現していた3時、9時位置のインダイヤルとの、視覚的差別化を図るためだった。

「一方でケースやブレスレットは、シンプルな方向にデザインした文字板とは逆のテイストにしました。一般的にケースとつながるバンドのエンドピースは、フラット、あるいはケースの足より下げた位置にすることが多いのですが、今回は逆に足より高くして、モデルのアイコンにしました。これには2012年アテッサ H610モデルを参考にし、部品同士の合わせ部分において凹凸の躍動感を演出しました。また足を多面デザインにし、ヘアライン仕上げにもこだわりました」

ところが最初の試作品では、4面で構成される足の仕上がりが芳しくなかった。特に一番目立つ大きな面のシャープさが足りず、崩れていたのだ。

「試作品を見たとき、『これはダメだな、面がよじれていて、求めるイメージとかけ離れている』とすぐに製造現場に連絡を入れました。同じく、現場側も危機感を感じていた。こちらが連絡する前から、すでに改善に向けて、別の方法で何とかしようと動き出してくれていたのです。現場にも、このモデルに込めるデザインポイントとこだわりが強く、細かく共有されていたのは嬉しかったですね」

この問題は、2014年に誕生した多面仕上げを特徴とする「シチズン エコ・ドライブ サテライト ウエーブ F100」の開発時に導入した加工機を応用して使うことで解決した。

―期待を超えた納得の仕上がり

alt

冨山の想いとは、当初真逆の方向に進んだデザイン。だが「エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」の仕上がりは期待以上に納得できるものになった。

「“面で攻めた”ことで、文字板もケースも筋目の強い感じが出せて、期待以上の完成度を実現できました。これまでのデザインを良い意味で壊しながら、本質のテイストを維持しつつ、新しいアテッサに仕上がりました」

鋳造を彷彿させる金属の素材感で、光が当たるとスターダストのようにキラキラと輝く文字板をはじめ、ケースやブレスレットまですべての面がシャープに仕上がり、あらゆる部分が主役となっていると冨山は語る。

alt

「店頭では、この外装の美しさ、カッコ良さを感じて頂くだけでなく、中身のGPSムーブメントの受信感度やスピード感もぜひ感じて欲しいですね。宇宙にある衛星と繋って動くこの時計。その動きの速さ、機能の素晴らしさ。個人的には『まるで生きているようだな』と思って、つくづくその動きに感心してしまうんです。今回のモデルは、いかにも『多機能』なデザインではなく、質感にこだわったシンプルなデザインに仕上げました。もちろん、当然ながらGPS衛星電波時計をはじめ、多彩な機能を備えています。本モデルに秘められた凄さを、もっと知っていただけたらと思います。将来、カラーバリエーションももっと増やしたいですね」

冨山は当初は参考にするつもりだった、自身が購入して大切にしている2012年の「アテッサ」と同じように、このモデルを個人的にも購入する予定だ。つくり手自身が欲しいと思える時計。あなたもぜひ実物で、その魅力を体験してみてはいかがだろうか。

INFORMATION
製品開発部・第一製品開発課 冨山 泰史

INTERVIEWS

SHOP

SUPPORT

修理のご相談や不明点など、フォームからお問い合わせください。

CATALOG

2018SS ATTESA カタログ   PDF / 7.5 MB