INTERVIEWS - VOL.02

チタニウムウオッチのパイオニア「アテッサ」のデザインDNA

「アテッサ エコ・ドライブGPS衛星電波時計F950」はいかにデザインされたか?
ATTESAのフラッグシップモデル、それが「エコ・ドライブGPS衛星電波時計F950」だ。
デザインを担当したのは、入社7年目というシチズンの若きデザイナー、井山 健二郎(いやま けんじろう)。エレガントでスポーティなそのデザインは、どのように誕生したのか。東京・青山のシチズンデザインスタジオで話を聞いた。

―チタニウムにこだわるシチズンの「ザ チタニウムウオッチ」

シチズンが2011年、世界で初めて製品化した光発電衛星電波時計「エコ・ドライブ サテライトウエーブ」。その思想を継承した最新ムーブメントF950を搭載したモデルが、「アテッサ エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」である。

シャープで力強くスポーティでありながら、エレガントな上品さも兼ね備えたこの腕時計をデザインしたのが、2012年にシチズンに入社したデザイナーの井山 健二郎だ。

シチズンの光発電衛星電波時計との出会いは2011年、美術大学の学生としてシチズンに内定をもらった時だという。

「自分は腕時計をしなかったので、それまでまったく興味がありませんでした。でも就職活動中に『(シチズンを)良い会社だな』と思って入社を希望しました。内定を頂いてから製品を見に来ないかと誘われて、ブラック&グリーンのあの初代サテライトウエーブモデルを初めて目にしたんです。技術的にも最先端だし、正直に『カッコいい!』と思いましたね」

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入社の翌年から、井山は「アテッサ」のデザインに携わってきた。まず、「アテッサとはどんな時計か」を知るために、先輩デザイナーたちが手がけたこれまでのモデルをすべて見て、そのアイデンティティの何たるかを学んだという。

「シチズンは『時計の未来を切り開く会社』であり、アテッサはその最先端の技術を結集した時計として1987年に誕生しました。そして第1号モデルから、素材にチタニウムを用いた『チタニウム製の腕時計』でした。30年を超える歴史の中で、エコ・ドライブ(光発電)でないモデルはありましたが、ステンレススティールのモデルはひとつもありません。『アテッサ=チタニウムウオッチ』なのです」

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シチズンが最初にチタニウムを使用した腕時計を開発・発売したのは、1980年のこと。以来、素材にこだわって時計づくりを続けてきた。シチズンのチタニウムウオッチは、「他社のチタニウムウオッチとはまったく違う」と井山は語る。

「シチズンはチタニウム素材の組成にまでこだわっています。また、難加工材であるチタニウムの加工においても、高い技術を持っています。ただこれまでは、その高い技術を『チタニウムをチタニウムらしく見せない』、つまり『チタニウムをステンレススティールと同じように見せる』という方向に用いてきました。ステンレススティールのように見えるが、着けてみると驚くほど軽い。その驚きを商品力にしてきたのです」

―チタニウムらしさを前面に、ひと目で「シチズンのチタニウムとわかる」腕時計を

だが井山は今回、「アテッサ エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」のデザインで、まったく逆のアプローチに挑戦した。

「誕生以来、チタニウム素材にこだわってきたアテッサだから、シチズンのチタニウムであることがひと目で分かるような時計をつくろう。そう考えました。いまは、多くの人がウェブサイトで商品を見る時代。サイトで見ても、ひと目で「シチズンのチタニウムだ」と分かるような素材感の腕時計をつくろうと思ったのです。チタニウムの持つ、『いぶし銀』のような独特の輝きにこだわりたいと思いました」

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―スポンジチタンの質感を表現したサンドブラストダイヤル

そしてまず生まれたのが、ブラックのサンドブラストダイヤルである。精悍だが、光が当たるとキラキラとわずかに輝く。

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「デザインのインスピレーションになったのは、チタニウムを金属として利用する際にチタニウム鉱石から最初にできる原材料、スポンジチタンです。その荒々しくも豊かな表情のある質感を、文字板で表現したいと考えました。しかしアテッサはエコ・ドライブ、つまり光発電時計ですから、文字板は光が透過できる樹脂素材となります。光を透過しながらも、このスポンジチタンの質感を表現できるような文字板をつくって欲しいと、担当の技術者に相談したのです」

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文字板製造のプロフェッショナルたちは、驚異的な技術で井山のリクエストに応えてくれた。その仕上がりは実際、期待を遥かに超えるものだった。職人たちは金型にミクロン単位の凹凸をつくることで、まさにスポンジチタンを想起させるような、豊かな表情を秘めた文字板を形にしてくれたのである。井山はかつて、要素開発プロジェクトの文字板グループに所属していたこともあり、文字板には特別なこだわりがあった。そんな井山でも、仕上がった文字板を初めて見た時には感動を抑えられなかったという。

「こんなことができるのか、と驚きましたし、感激しました。また、この文字板の美しく神秘的な輝きを生かしたデザインにまとめ上げなければとも思いました。ぜひ店頭で、ご自身の目で確認して頂ければと思います」

―高いチタン加工技術を生かしたヘアライン仕上げのケース&ブレスレット

そしてもうひとつ、井山がこの「アテッサ エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」のデザインで「シチズンのチタニウムらしさ」の表現としてこだわったのが、ヘアライン仕上げの構成だ。

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「アテッサはこれまで、ビジネスマンがオンタイムに着ける、正統派の実用時計としてデザインされてきました。しかし今回は、オフタイムにもマッチするような、つまりスーツばかりでなくカジュアルスタイルにも似合うデザインに挑戦しました。」

そこで井山がこだわったのが、カジュアルでスポーティな雰囲気を作り出す、金属を切削加工した際に生まれるシャープでソリッド感のあるヘアライン仕上げであった。シチズンの強みであるチタニウムの加工技術を生かした、直線と面で構成されるケースやブレスレットに、ソリッドさを際立たせる強いヘアライン仕上げを加えたのだ。

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「時計全体でミラー面をできるだけ少なくして、工芸品というよりも『質実剛健な工業製品』らしさを追求しました」

実はこのこだわりの背景には、井山の生い立ち、金属との特別な関わりがある。井山の実家は、鋳造された金属部品をマシニングセンタ(大型の数値制御工作機械)で切削加工する鉄工所であった。井山は、子どもの頃からこの工場を遊び場に、さまざまな金属と文字通り「触れ合って」きた。

その経験の中で、井山は金属のソリッドな質感、切削加工で生まれるエッジや面構成の美しさなど、金属の魅力を知り尽くしていた。今回のヘアライン仕上げへのこだわりは、まさにそんな井山ゆえの独自の審美眼であり美学であった。

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サンドブラスト文字板にヘアライン仕上げのケース&ブレスレット。この組み合わせは、実家の工場で知った金属の肌目とその切削面、2つの比類のない美しさを知る井山だからこそ成し得たデザインなのだ。そのこだわりは、小さなプッシュボタンのディテールに至るまで貫かれている。

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「アテッサ エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950」ほど、チタニウムという金属素材の魅力を引き出した腕時計は他にない。

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デザイナー 井山 健二郎

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2018SS ATTESA カタログ   PDF / 7.5 MB